●ティラノ(Tirano) (世界遺産)
ティラノは、Ti1’及びTi3’から分かるように、スイスと国境を接するイタリア側にあり、スイスのサンモリッツから出るレーティシュ鉄道ベルニナ線の、車窓からの風光明媚な風景で知られるベルニナ・パスの終点にある。サンモリッツの南東、約40 kmに位置する。従って、スイス側から、このベルニナ・パスの風景を楽しむ人に取っては、その折り返し地点である。ベルニナ線は、20世紀初頭の鉄道技術の例証を示すものとして、世界遺産(レーティシュ鉄道アルブラ線・ベルニナ線と周辺の景観)になっている。その意味では世界遺産の一環の地とも見なされているのであろう。
また、イタリアからスイスへ、あるいはその逆に旅行する人にとっては、乗換点である。イタリア側は、ここから、ミラノに向かう列車(ティラノ・レッコ線;FS[旧イタリア国鉄、管理はRFI、運行はトレニタリア])の始点でもある。駅舎はベルニナ線の駅舎とは別箇であるが、隣接している。ミラノは、ここから南西、約113 kmに位置する。
我々は、車でTi2’の東のボルツァーノより更に東にあるドロミテ地区の中央に位置するアラッバ(Arabba)近郊のCampolongo峠にあるホテルから、コモ湖の更に北にあるキアベンナの近郊にあるホテル(より正確には、アグリツーリズモ)への通過点として、ティラノの駅に立ち寄ってみた。
スイスとの国境近くのステルヴィオ峠に上るヘアピン・カーヴの連続が厳しかったのと、その峠から、ボルビオに下りる道のトンネルが、両側合わせて1車線で、トンネルの入り口に信号が無く、トンネル内の途中で、対向車と出あい下り側の我々がバックしなければならないのには、ちょっと怖かった。4台続いて行った最後から2番目の車で、また、バックするのも十数mで済んだので助かった。こういうところは、今回の旅行でここだけであったが、イタリアの道路管理者の無神経には驚く。ティラノからステルヴィオ峠方向に行く車や人は、非常に少ないためでもあろう。
ティラノは、人口、約9000人(2012年)で、平均標高441 m(407?2659 m)で山に囲まれている
駅のすぐ前の駐車場に留まれ、駅前は閑散としている一方、ミニトレインが駅前広場にあったから
スイスからの観光列車が着いた時は、様相が一変するのであろう。ここは、国境の町(この駅の2 km北がスイスとの国境)なので、駅の改札口は、列車が着いた時は、税関にもなると、下に述べる本に書いてあった。スイスは、非EU国で、イタリアはEU加盟国なので、税関があるのも当然であろう。
1990年代に日本の小田原電気鉄道[箱根登山鉄道]を建設した時にベルニナ鉄道を参考にしており、これが縁で1989年に箱根登山鉄道とレーティシュ鉄道は姉妹鉄道協定を結んでいて、「ティラノ」の日本語の看板が壁に貼ってある。中根正和著「イタリア・アルプス鉄道紀行」彩図社(2003)によれば、この銘板は、サンモリッツ駅とアルプ・グリュム駅の計3ヶ所にあるそうである。日本にも同様なものがあり、箱根登山鉄道の強羅駅正面に「サンモリッツ」の銘板があり、箱根登山鉄道にベルニナ号があるように、RhB(レイテッシュ鉄道)に「箱根」と漢字で書いた車両が存在するそうである。
ティラノの後は、ほとんど休憩なしで、Cheavennaの近くのアグリツリズモ(農場とホテルを兼ねて経営)に、この後85 km走り、17時50分に着く。結局、朝8時30分にホテルを出て、9時間20分かけて、計320 km走行したことになる。
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