●はじめに

 ヨーロッパの観光地の中では、総じていえば地中海地方が、一番親しみ易く好んでいる。特に、その島々は、ほとんどが観光地で、独特の雰囲気を持っている。2015年夏頃に始まったシリア難民の通過経路となる以前は、第2次大戦後は、概ね平和な楽園に近い地域であった。地中海に浮かぶ島を大きさの順に云えば、シチリア島(25460 km2: )サルジニア島23813 km2:伊)、キプロス島(9251 km2:北キプロス共和国、キプロス共和国、イギリス)、コルシカ島(8681 km2:仏)、クレタ島(8261 km2:ギリシャ)で、サルジニア島の大きさは、18,789 km2で、四国の約1.3倍で、人口は、約165万人(世田谷区の約2倍)である。治安などに問題のあるキプロスを除いてすべて訪問していて、今回、サルジニアを訪問した。

 東は、ティレニア海、西はサルジニア海、北は、ボニファチョ海峡、南は地中海と一応区分されているが、四方、海(広義の地中海)に囲まれている。海岸線の長さは1849 km、周りは岩(花崗岩と堆積岩が主)で急こう配のところと、入江や弧を描いたところからなる。岩の年代は古生代(3億年前)迄さかのぼり、花崗岩、片岩、粗面岩、玄武岩、砂岩、石灰岩、ドロマイトなどある。川には、5つあるが(フルメンド―ザ川、コギーナス川、ティルソ川、フルミニ・マンヌ川、チェドリーノ川)、今回1つも認識しなかった。

今回の旅行の前半の201492日から13北イタリアのドロミテなど、主として山岳地帯を訪問し、915日に、ミラノ(リナーテ空港;国内線用飛行場)から、サルジニア島(カリアリ空港)に飛び、宿泊施設4ヶ所で計11し、926日にカリアリ空港から、ローマ空港を経由し、27日に成田に帰国した。4ケ所は、アグリツーリズモ1ヶ所、リゾートホテル1ヶ所、B&B2ヶ所(但し、1つは、アグリツーリズモでもある)で、ここでも、大変ゆったりした気分で過ごすことができた。島は広いが、世界遺産は、古代の建造物のヌラーゲ1ヶ所のみで、天然造物として特に他の場所では見られない程珍しいものは、ほとんど無い。

ヌラーゲnuraghe)とは、島内にある神秘的な石積みの建造物で、BC1500年頃からローマ人に征服されるBC3世紀頃まで文明を繁栄させていたヌラーゲ人が築いたという。目的・用途は定かでないが、侵入する敵の防御のため、または宗教目的と言われている。この島には、約7-8000程が現存する。

サルジニアに限らないが地中海一帯の夏の天気は、「観光」向きで、雨はほとんど降らない。ここに、サルジニア島の“州都”であるカリアリの観光シーズンの降水量を示すが、9月でも、傘は1度も使わなかった。ただし、カリアリに着いた前晩には、局地的に大雨が降ったようで、未舗装道路には大きな水たまりが残っていた。それでも、マルタ島とは違って、中央部は山岳地帯がないので、給水に困っている様子は見えなかったが、輸入しているのかもしれない。

表1.カリアリ(北緯: 39°13’)の観光時期の降水量と気温;東京との比較

5

6

7

8

9

10

降水量/mm (*)

39(135.5)

5(311.0)

3(105.5)

10(105.0)

32(155.5)

53(384.5)

平均最高気温/°C(*)

22.3(24.7)

26.6(26.9)

29.6(30.5)

29.8(31.2)

26.9(26.9)

22.8(23.0)

平均最低気温/°C(*)

12.3(16.7)

16.1(20.7)

18.6(23.9)

19.1(24.8)

17.0(20.1)

13.7(16.0)

(*) 括弧内は東京(北緯:35°41’)の2014年の平均値。

表1が示すように、サルジニア島の観光最適期(6-9)の気温は東京とさして変わらないが、降水量は大変少なく、観光には適している。そして、78月は、バカンスの季節で混むし、ホテル代も高いので、6月か9月が、最適である。実際、今回も、傘を使ったことはなかった。

サルジニャといえば長寿の島として有名である。米国の健康雑誌によると、100歳まで生きる確率が 他の地域よりも3倍も高いご長寿ナンバー1だそうである。地域ごとに違う種類豊富なパンやパスタ、魚などの豊かな食、温暖な気候、ストレスの少なさなどが理由と言われている。

なお、島の名称は、サルデーニャ語では、Sardigna, Sardinna, Sardinnia、イタリア語ではSardegna、カタルーニャ語ではSardenyaと綴る。日本語では、サルディニア、サルジニア、サルヂニア、サルデニアなどがあるが、本稿では、一番簡単なサルジニアを用いることにする。古代ギリシャ人は鰯(サンダリオン)に似ているからそう名付けたのが名前の起源である。

◆サルジニアの位置

  緯度から言えば、サルジニアの南端に近いカリアリでさえ、日本の釜石に相当するが、9月でも、泳ぐのに適した気温、水温を有している。

  経度からいうと、サルジニアはイタリア本島のずっと西側に位置しているものと思っていたが、イタリアの「長靴」が垂直に位置するような地図(In1)から直観で得た誤解であることが、今回認識した。このような地図(In)の北方向をよく確認して、この長靴を曲げてみると、サルジニア島の州都のカリアリは、ミラノよりはわずかに西ではあるが、ジェノヴァよりはむしろ東に位置することは次の表を見れば分かる。

表2.サルジニア州都カリアリの位置。

緯度

経度

相当する緯度の日本の都市

ミラノ

45°28’ 0’’

9°10’ 0’’

稚内:45° 24’ 56’’

ジェノヴァ

44°24’ 39’’

8°55’56’’

名寄:44°21’2’’

カリアリ

39°13’ 0’’

9°7’ 0’’

釜石:39°16’32.9’’

 また本文で述べるがフランス領コルシカ島(1768年まではイタリア領で、ナポレオンが生まれた翌年にはフランス領)とは、狭いところで約12 kmのボニファシオ海峡を隔てて隣り合うが、両島は、昔から、いろいろな点で、昔からかなり異なっていたことを知った。両島には、古代からあまり交流がなかったようで、サルジニア島には7000-8000個もあるという歴史的名物のヌラーゲ(その1つは、この島で唯一の世界遺産)は、コルシカ島には無かった。両島ともイタリア本土との繋がり(被支配)はあったが、お互いに侵略したり、交流したことはない。他の島を侵略するほどの力が無かったのか、必要も無かったのかだろうが、やや意外に思う。

画像をクリックすると大きくなります
In1’
In2’
In3’
In4’
In5’
In6’

In1’

サルジニア島の地図(日伊文化交流協会監修「現代イタリア情報館」ゑぬ文化社);緯度、経度は時計方向に回転していて、経度では、ジェノヴァやミラノとそう変わらない。

In2’

雑誌「旅」のサルジニア特集号にあった地図;今回、カリアリから反時計回りに、島を一周した。地図上に、宿泊場所4ケ所を記入してある。例えば、「(1) 2」とあるのは、●印の場所で、(1)番目のホテルで2泊したことを意味する。

In3’

机直人著「イタリア魅惑のビーチ」(詳細は、資料編)にある海岸を中心にした地図。

In4’

地球の歩き方「イタリア」にある地図; 当然ながら観光地・交通手段を主に記している。

In5’

Google Map;同じ島でも、In2’-5’だけでも感じが違うし、取り上げている町も微妙に違う。

In6’

サルジニア州の旗。1999年から正式にサルジニアの紋章と認められた。4人のムーア人が布を巻いている旗棒は左側に来るのが正式。詳細の説明はネットで見られる。

(註)番号上の「‘」は、他から引用したものであることを意味する;後にでる「’’」は、以前の旅行記で用いた図を再度用いたものを意味する。