III. フランス側

ロープウェイのHelbronner(エルブロンネール; エルブロンネルという呼び方をしている資料もある)までは、イタリア領であるが、その先はフランス領である。ここで、フランス側のChamonixまでの切符を購入する。HelbronnerからAiguille du Midi(エギュイ・デュ・ミディ)経由、Chamonixまでの片道の料金は、大人(15-64)76 €、子供(5-14歳)とシニア(65+)は、65 Euroであった。Aiguille(しばしば、Aig.と略される)は、フランス語で、「針峰」と訳す。発音は「エギュイ」の方が、より正しいと思うが、上記の「エギュイ」とした。

このロープウェイの建設計画は、19世紀前半からすでにあったが、立地条件が悪く、計画が何度か中止された。1909年に、フランス・ケーブル会社がボソン氷河に沿ってコル・デュ・ミディを渡る3ルートの建設認可を得た。1911年に工事が始まったが、第一次世界大戦により1924年まで工事が一時中止される。1940年、コル・デュ・ミディまでの業務用ケーブルが敷かれる。1949年にイタリアのミラノの技術者Dino Lora Totinoは、Plan du Aiguille(2317 m)からAiguille du Midiまで一直線にケーブルカーを渡す設計を提案し、長さ1850 m、重さ1 トン以上のスティール製ケーブルをコルからエギュー・ディ・ミディまで、9時間かけて人力で運搬した。その結果、1954624日にChamonixPlan de l’Aiguille間が、1955年にPlan de l’Aiguille (2317 m)Aiguille du Midi3842 m)間が完成した。当時は世界で一番高かった山頂駅の標高は、完成から約20年間、乗り物で行ける世界最高峰の展望台であったが、1980年にスイスのツェルマットに標高3883 mのクライン・マッタホルン展望台が完成して、その座を譲った。

Aiguille(エギーユ)は、上述のように「針峰」を意味する。Midi(正午)というのは、麓のシャモニーから見ると太陽が正午にこの山の上に来るところから、名付けられ、「ミディ針峰」と訳せるが、この語を用いる案内書はあまりない。

今回のロープウェイでアルプスを越える行程中、最も景色が良いのは、エルブロンネールからエギュー・ディ・ミディへのロープウェイからの眺めと、エギュー・ディ・ミディ展望台からの眺めであろう。

道中、ゴンドラの進行方向に向かって左側(Left)、右側(Right)の山などの景色を、写真では、交互に撮ったので、一緒に並べると混乱するので、別にまとめて、(L)、(R)の文字を付けて、後に示す。

画像をクリックすると大きくなります
Mf1
Mf2’

Mf3’
Mf4
Mf5
Mf6
Mf7
Mf8
Mf9
Mf10
Mf11’
Mf12
Mf13
Mf14
Mf15
Mf16
Mf17
Mf18
Mf19
Mf20
Mf21
Mf22
Mf23
Mf24
Mf25
Mf26
Mf27
Mf28
Mf29
Mf30
Mf31
Mf32
Mf33
Mf34
Mf35
Mf36
Mf37
Mf38

Mf39

Mf40
Mf41
Mf42
Mf43
Mf44
Mf45
Mf46
Mf47
Mf48
Mf49
Mf50
Mf51’

Mf1

Pointe HelbronnerからAiguille du Midiに渡る鳥瞰図。ゴンドラ進行方向から見て左側に、Mont Blancが、右側にAiguille du MidiGrandes Jorassesが見え、眼下にVallee Blanche(バレー・ブランシュ:白い谷)がある。この区間では、ゴンドラは左側通行で、北西方向に進む。午前中なので、太陽は後方から照らしている。写真は連続的に撮っているので、ロープウイの右側左側の風景の判断は、後で、陰の方向でも確認した。周囲の山は、近くの山々は後方のものほど高くないので、少し調べただけでは、名前が分からないものが多い。

Mf2’

地球の歩き方「イタリア」2016-17版から引用した。

Mf3’

JTB発行World Guide 「フランス」2000. 9発行;古いが、昔購入したものが、手元にあった。シャモニー中心の図である。

Mf4

1115分に、Helbronnerを出ると、下に、その施設の一部が見え、遠方に、行き先のAiguille du Midiが見える。距離は、約5100 mで、高度差は、380 mなので、他の部分より勾配は小さい。

Mf5

ゴンドラの中から見た先行のゴンドラと更にその先のゴンドラの乗客が見える。定員4名で、対面式に座席がある。多人数が、立って運行するイタリア側と、ゴンドラの定員、形、色などが全く違う。3両が、組になって運行され、車両は計36台ある。Grandes Jorassesを含む連山は行手の右側に、Mont Blancは左側にある。

Mf6

Mf7

Mf8

先方にAig. du Midiの展望台が見える。5 km余りの間にケーブルを支える岩が1ケ所見えるだけである。対面するロープウェイのケーブルが見えないのと、ケーブルが、雪の中に入っているように見えるのが不思議である。

Mf9

Aig. du Midiのゴンドラ到着駅。左側通行なので、左の空間に到着する。

Mf10

パンフレットにあった全貌外観。下側を北側施設ということがあり、そこの高度は3777 mと言われ、富士山より1 m高く覚えやすいが、そのどの部分かははっきりしない。また、橋で結ばれた展望台は3842 mと書かれているが、尖塔の先なのか、展望台の床なのかはっきりしない。多分、尖塔なのであろう。概略説明:エレベーターは、シンドラー社製で、2015年夏に開業;I空中遊歩H:頂上テラス:3842 mG:頂上行きエレベーター;情報は、www.compagniedumontblanc.comにある。ただし、フランス語と英語による。番号11-19間は、工事中。

Mf11’

Mf12

展望台の壁に示されていた当施設の全貌;Mf11’と基本的に同じ。「Pas dans le vide」(空中遊歩)という建物の外に突き出たガラスの箱が名物で、この中で持参のカメラで写真を撮ってくれる。左側にMont Blancがあるので、良い角度で撮ってくれれば、それをバックに写真を撮ってもらえる。しかし、そちらが、南方向なので、逆光になり、計画どおりにはいかない。より低い部分にも展望台があるが、より高い岩の中をくり抜いた無料のエレベーターで、最上部の展望台に行ける。

Mf13

みやげもの店。右上に4810という数字が見えるが、Mont Blancの高さである。

Mf14

Mf15

両施設を繋げる橋、右側が、南(高層)棟。正面に見える一番高い山は、Aig. de Leschaux (3759 m)である。山の帰属は、後に示す。

Mf16

高層棟に移る橋を上から見たところ。左に見える山は、Grandes Jorassesや、Dent du Geantなどである。

Mf17

橋から見る尖塔。

Mf18

少し違う角度から見上げた尖塔。

Mf19

高層棟の下側の展望台。

Mf20

上の展望台から見たシャモニー(Chamonix)方面;街の中心は、Mf21の人家の密集している付近である。右から左方向に流れる川は、アルヴ(Arve)川(全長102 km)で、アルプス山系から発し、ジュネーヴでローヌ川に合流する。

Mf21

Mf22

上の展望台から下を見たら、丁度Elbronnerに向かうゴンドラが見える。

Mf23

上の展望台から見た下の展望台方向。横に氷河がある。これが、Bossons氷河の一部なのかどうかは分からない。他でもそうだが(Mf4-R)、氷河が波打って下っているのは、物理的な理由があるのであろう。Chamonixの街の中心は、Mf23の下の展望台に一部隠れている部分。

Mf24

Mf25

最上階の展望兼休憩空間。混雑時のことを考えてか、ベンチは置いてなく、周りに大勢の人が座れるように段差を付けた一種の木製ベンチになっている。ちょっとした良い工夫であり、皆さん思い思いに休憩している。国籍が分かれば、面白いと思うが、中国人と日本人ぐらいしか外見で国籍が分かる人種がいないというのも不思議なことである。今世紀に入る前は、東洋人の海外旅行者は、ほぼ、日本人だけだったので、ある種の緊張感があったが、中国人が日本人より増えて、その点、気楽に感じられるようになった。ヨーロッパ人には、日本人と中国人の区別はよくつかないらしい。なお、正面の左手と右手先方に頂上の見える山は、それぞれ、Aig. TrioletAig. de Leschauxであることが、連山の帰属をして、後で分かる。気温は確認していなかったので分からないが、皆さん一応、防寒着を着ていて、寒そうな感じの人はおらず、無風で、太陽が暖かく大変気持ち良さそうである。時刻は1228分であるから、影の方向が、北である。3842 mという高さは、尖塔の先端であるとしても、ここはすでに富士山よりは高く、老若男女が、ほとんど歩くこともなく来られる文明の利器の発達を大変有難く思う。

Mf26

展望台の背後方向のMont Blancの見える側から、右手を見ると、建物から空中に出ている透明ガラス張りの空間があり、人が立って中側から写真を撮ってもらっていて、これが、Mf11’にあるIに相当するこの施設の目玉の「空中通路」であることが分かる。このサービスを受けるには、自分が、この写真を撮っている場所から、「」の字の下側から上側方向の逆方向に、行列しなければならない。時間は十分あるので、行列に並ぶことにする。費用は、ロープウェイ代に含まれているから追加料金はいらない。20131221日から一般公開されていて、ヨーロッパ最高のアトラクションla plus haute attraction d’Europe)と異名をつけられている。営業時間は、ネットで調べられるが、季節によって異なるが、朝840分から、午後1530分の間は、年間、いつでも開いている。しかし、天気が悪い時に行っても意味はあまりないであろう。「空中通路」の安全性などについては、これを施行したDania-Vitrage社によって、次のように担保されている。ガラスの厚さは36 mmで、1500 kgに耐え、温度は、最低-40 ℃、風圧220 km/hまで耐えられる。

Mf27

それで、行列の最後に並ぶ。壁には、”Pas dans le vide”(空中通路)と、ここから、30分かかると書いてある。実際は、40分弱かかった。「空中通路」は、ここにあるように公式訳語であるが、通路ではないから、あまり適した訳ではない。英語では、”Step into the void”と訳されているから、「空中への一歩」というのが、主旨であるが、これを4文字の漢字で表すのは難しい。

Mf28

Mf29

行列に並んでいる間も、建物に入る前は、周囲の景色が眺められ写真が撮れる。正面にGrandes Jorassesも見えるし、微かにMatterhornの先端も見える。その時は全く気づかなかったが、後で、写真で確認できた(詳細は、山の帰属(右編)で述べる)。

Mf30

日本の宗教団体の宗主が当地を訪問したと書いてある。行列している横の壁に書いてあるので、必然的に全員が立ち止まりながら眺めることになる。他に、同種の宣伝看板は無く、不思議な気がする。高い広告料を支払ったのであろう。

Mf31

ここから15分の待ち時間とある。廊下の先に見えるところから屋内に入る。

Mf32

屋内に入る際、直進すれば、ガラスにぶつかり、やや左に曲がらねばならないので、ガラスにぶつからないように注意書き”Vigiprate“があるのかと思った。その中には、ガラスの反射などで写真はよく撮れていなが、当施設が建設される前に現地にあった岩山の切り取った部分の一部を展示してあるらしい。この、Vigipirateというフランス語は、辞書には載っていない。Vigieという単語はあり、「見張り」という意味である。Pirateは、英語にもあるように、「海賊」とか「略奪者」の意味である。従って、強奪を電子的に監視しているという警告らしい。その下にある”Alerte Attentat“は、[警報で警戒]という意味であろうから、このガラスを破ったら、警報が鳴るようにしてあるということらしい。フランスには、強盗、泥棒が多いから尤もと思うが、現地で見たときは、思い至らなかった。警報レベルに5段階あり、このオレンジ色は、3番目らしい。今後、フランスの街で、このような警告があるか注意してみようと思う。

Mf33

Mf34

「空中通路」に入る前の、注意書きが書いてある。撮影のために入るには、靴の上にスリッパを履かねばならない。これは、多分、ガラスの床を汚したり、スパイクなどで傷つけない為であろう。荷物は、全部、左に見える箱に入れる。

Mf35

2人の係員が居て、我々は、カメラを2台持っていたので、それを手渡して、各係員が矢継ぎ早に7-8枚の写真を撮ってくれる。こちらから見て右手側の人のカメラからは、左手方向にある山(Mont Blancの裾)が入って背景としてよいが、手ブレしていたり、焦点があってないので、別の左側の係員が撮ってくれたものを1枚掲載する。毎日、写真を撮っている割には上手くない。ガラスの下は、1000 mぐらいあるそうである。行列に並んでから約40分経過していた。

Mf36

見残した部分を見る。施設のすぐ横に大きな岩山がある。ある人の旅行記には、ここで、ロッククライミングの練習をしていたと書いてあり、下から登れば結構高い。

Mf37

万年氷のあるトンネルを潜るとChamonix側の狭い展望場所に出る。先程見た大きな展望台からの眺めと変わらないが、狭いので、人がたむろしている。最前列でないと、景色や、表示板が、見られないので、渋滞気味である。

Mf38

Mf39

Chamonix側に降りるケーブルに向かう。そこは、Chamonixから上ってくる人たちに対しては、入り口なので、いろいろな言語で、歓迎の意を表している。日本語の「いらっしゃいませ」というのは、売店などで使う話し言葉で、書き言葉としては、「歓迎」が適当であろう。中国語(台湾語?)は別に書いてある。

Mf40

ロープウェイで、谷の下に広がるシャモニー側に降りる。降り始めたのは、1425分である。勾配は大変、急である。急なのに驚くが、考えてみれば、エレベーターは、もっと急である。

Mf41

ハンググライダーが飛行している。しかも、2人乗りに見える。

Mf42

下に、中間駅のPlan de l’Aiguille(2317 m)が下に見える。この間、ケーブルを支える鉄柱はない。後で写真を見て気づいたが、右側通行である。上り側はケーブルが一見1本しか見えず、しかも細い。これはどうしてなのだろうか。Planは、「平面」という意味だから、ここが平らであるので付けられた名前であろう。

Mf43

Mf44

Mf45

Plan de l’Aiguille駅で、一旦外に出て、降りてきた後を振り返る。ほぼ、1436分なので、真南方向のAig. du Midiはまだ逆光線方向にある。乗車時間は、約10分であった。上りのケーブルも2本あるようであるが、下側のケーブルは下に弛んでいる。

Mf46

駅のすぐ近くに、Barと土産物店を兼ねた建物が1軒と土産物屋が3軒ほどある。高山病などの応急処置をすると言う表示のためか、赤十字の旗も出ている。この先を行くとハイキングができるが、そのつもりが無かったので、すぐ下へ降りるロープウェイに戻る。

Mf47

Mf48

Chamonix (正式には、Chamonix-Mont-Blanc)に降りるゴンドラから、下の建物が見えるが、別荘群なのか、同じような建物が同じ方向(つまり南方向)を向いている。

Mf49

下に着いたのは1453分頃であったので、Plan de l’Aiguille駅での小散策を入れてもAiguille du Midiから30分以内で、Chamonixに着く。外に出るには、土産物店内を通ることになる。

Mf50

後で、駅前から、降りてくるゴンドラを下から撮る。急勾配であることが分かる。

Mf51’

ネットで見るBossons氷河の場所。Mf23Mf24で示した氷河が、これの支流をなすのかどうかは、はっきりは分からない。