↑カナディアン号(ジャスパーにて)

↑カナディアン号の食堂車

↑スカイトレインの新型MKU
  (ウォーターフロント駅)

 昨年アルバータ州観光公社主催のメディア向けの会で思いがけず「同州VIA鉄道の旅6日間」が当たった。12月までの出発
であったが、米国におけるテロもあり、この5月下旬にエア・カナダ便にて成田を発った。訪れたバンクーバーは曇っており、今年
は異常気象でまだ寒かった。

◆久し振りに見るスカイトレイン
 機内と車中泊が続くので、オプションで1泊。早速1986年のEXPO交通博時に乗ったスカイトレインがこの1月から2号線(ミレニアム線)の最初の区間を開業したので行ってみた。始発駅のウォーターフロントは、旧カナダ太平洋鉄道の華やかなりし時代を偲ばせていた。
 自動券売機で市内中心部の1日券(8ドル)を買って乗車する。ポンバルディア製の流線形MKU型の新車が導入されたが、まだ開業時からの、角型の車両が主流であった。
 30分程で新線との分岐点コロンビア駅に着き、そこからフレーザー川左岸沿いの新線を進み、2つ先のモダンな現終着駅ブレードに着いた。この先が開業すればループ状に周遊できて大変便利になると思えた。
 帰途はようやく白地に黄と紺のストライプ入りの新車に乗れた。無人運転なので運転席はないが、正面の中央に折畳み式ベンチがあり、座ると運転士気分が味わえた。車内やホームには治安や無賃乗車防止のため巡回する職員の姿が目についた。
 SLファン見逃せない北バンクーバー発のロイヤルハイドン号は、エンジンの寿命から運転中止となり、スコーミッシュの鉄道遺産パークに最近保存されたそうである。

◆VIA鉄道の誇るカナディアン号に乗って
 乗車時刻をチェックしたところ、東部での貨物列車のトラブルによる迂回から到着が4時間遅れと聞き、指示通り17時半頃バンクーバー駅に向かった。
 カウンターで乗車手続きを済ませ、キャビンに運んでもらうトランクを預けた。構内は混雑し、個室寝台に乗るシルバー&ブルー・クラスのラウンジは、サービスのソフトドリンク類を飲みながら待ちわびる人達で溢れていた。
 19時過ぎ、指定車両の個室に入るとすでに荷物は運び込まれてあった。小型クローゼットとトイレブース付きのダブル・キャビンはアームチェアが2脚置かれ、飲料水も出る洗面台の棚には清潔なタオルのほか、石鹸、シャンプー、ローションをセットしたアメニティが篭の中に納められていた。この列車に乗るのは数年ぶりだがグレードアップやサービス向上の跡も窺われた。
 ほどなく第1班の夕食のコールがあったが、すでに19時半を回っていたので最初の時間帯を予約しておいてよかった。食堂車はガラスの間仕切りのエッチングやテーブルセッティングがレストランの雰囲気を漂わせ、48席は全て満席。ロゴマーク入りのカバーのついたメニューを見ると、英仏独語のほか、日本語でも書かれており、内容が細かくわかる。
 今宵は2種あるスープかサラダのスターター、メインはビーフ、チキン、サーモンのほか、ベジタリアン向けとバラエティに富んでおり、好みに合わせチョイスできて嬉しい。同席した夫婦はたまたま鉄道模型マニアで話がはずみ楽しかった。列車が動き出したのはメイン料理が出た21時頃で、その時思いがけず歓声があがった。
 食事を終えラウンジと2階席のある最後尾のパークカーに行く。途中会った列車長によると、今日の乗客数は約240名、荷物車、2両の座席車を含む24両もの長大編成を3重連の機関車が引っぱっている由。アメリカとカナダの客が最も多く、次いで日本人だそうで、メニューに日本語があるのもうなずける。
 2階展望席は外がよく見えるよう灯りを暗くしており、列車はスカイトレインと併行したのちフレーザー川の大鉄橋を渡った。夜も更けてあまり景色も見えなくなったので、翌朝に備え個室に戻った。
 ベルを押しアテンダントの女性にベッドメーキングを依頼、力仕事なのだがチェアを折り畳んでベッドの下に押し込み、あっという間に壁を倒してセッティングした。羽毛の寝具は心地よくすぐ寝た。途中、貨物列車との交換待ちのビービーという警告音が気になり目を覚ましたが、備付けの耳せんをつけて再び眠りについた。
 早朝カーテンを開けてみるとすでに明るい。深夜に通るはずのカムループスのまだ手前で遅れをとり戻していない様だ。朝食は先着順で最初の組は席がなく、次の予約で食べる。やはりメープルシロップのついたパンケーキが美味しかった。直ちにドーム席に戻ると地図や望遠鏡が携えて野生動物等のウォッチングをしている人も多い。この辺りから車窓はよくなり、ハイライトの一つ、ピラミッド滝の所では列車も徐行してくれた。ロッキーの最高峰ロプソン山は残念ながらどんよりとした天候で下の方しか見えず、併行する川は雪融け水が濁流となっていた。
 コバルトブルーのムース湖に差しかかる頃にランチタイムとなり、デザートもそこそこに国立公園の中心の町ジャスパーで下車した。
直ちにVIA鉄道手配の車で熊も出そうな山道を先回りした。ここはロッキ−山脈をバックに、アサバス川とジャスパー湖にはさまれた細長い中洲を列車が走る絶好のポイントで、ようやく撮影ができた。
 もう1つカナダの観光列車で有名なロッキーマウンテニア号が到着する頃なので駅に戻った。開業当時にはなかった階下が食堂車の2階建て車両も2両従えていた。
 小雪もちらつくその夜は、当地の名門リゾートホテル、ジャスパー・パーク・ロッジで足をゆっくりと伸ばした。

◆乗物好きには面白いエドモント
 朝早く車で約4時間の、アルバータの州都エドモントンに向かった。同地では顔見知りの市観光部長の案内でまずフォートパークを訪れた。
 ここは毛皮交易所として栄えた1900年前後の街並みを再現した公園で、
ボランティアが昔のSL列車やトラムを動かしていた。また市内中心部でも1913年の建造当時世界で最も高い2層ブリッジと名をはせたCPRの旧路線に保存トラムを走らせていた。
 びっくりしたのは、元阪堺電軌のちんちん電車が車内も昔のままの内装で行き来していた事で、何か妙な感じもした。すぐ隣り下に併行する近代的な橋には、1978年世界的ライトレイル・ブームの嚆矢となった電車が走っており、一部乗車してみたがなかなか清潔、安全で駅構内のデザイン等も個性的であった。
 最後に寄ったVIA鉄道の駅はかつてのCNタワーの処からやや北へ移動、カナディアン号がバック運転で入線する非常に長いホームが目についた。
 当地から約2時間、南のステトラーで週末のみ運転されるSL保存鉄道は今回は日程の制約から行けなかったが、近い再訪を願いつつ日本への帰途についた。


               2002年7月19日(金)交通新聞に記載

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西部カナダ鉄道紀行

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↑昔の面影を保つ、旧阪堺ちんちん電車

 
 トラン・デュ・モンド代表

 三浦 幹男(日本旅行作家協会会員)