陸続きのヨーロッパを移動するには鉄道が一番だ。車窓を眺めているうちに国境を越えてお隣の国を走っているなんていう国際列車の旅は、日本にいては絶対に味わえない旅の醍醐味である。国際色豊かな色とりどりの列車編成。列車の愛称も「モーツァルト」「ミケランジェロ」など文化の香り豊かで列車の行き先にゆかりの人物の名前がつけられ、そうしたネーミングを聞くだけでロマンチックな雰囲気に満たされてくるのだ.。
今回は、猛暑のヨーロッパを旅したが、ドイツのミュンヘンから国際列車ユーロシティの「ティエポロ号」に乗車した。ティエポロとは18世紀にヴェネツィアを中心に活躍した画家の名前で、それゆえ列車は一路ヴェネツィアを目指す。編成はすべてイタリアの客車、引っ張る電気機関車はオーストリアの所属である。出発後一時間もしないうちにオーストリアに入る。インスブルックを経てブレンナー峠に挑むが、かつてゲーテやモーツァルトが馬車で越えた由緒ある峠も列車は難なく通過してしまう。サミットが国境となっていてイタリアの機関車に交換したのち、ごつごつした奇岩を眺めながらヴェローナを通ってヴェネツィアにたどり着いた。
こうした華やかな国際列車以外にも、ヨーロッパには様々な列車が走っている。イタリアでは中部アドリア海岸に近いマチェラータを訪ねたが、二両編成のディーゼルカーの走るローカル線に乗ってみた。のどかな旅ではあったがエンジンのパワー不足からか勾配にさしかかると冷房を止めての山越えである。今夏のような猛暑では灼熱地獄だったが、こんなハプニングも旅にはつきものである。
最後は、アッシジからローマまで高速列車ESスターに乗ったが、こうした新幹線タイプの列車は、今や洋の東西を問わず鉄道旅行の主流となってきたようだ。ただ、高速列車ばかりになってしまうと鉄道の旅も味気ないものとなってしまう。不便なローカル線も、ほどほどに残っていて欲しいものである。
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