今話題の「ロングステイ」で、より豊かな人生の後半を
 (文・千葉千枝子)
上の写真はクアラルンプールにロングステイされている、貝沼寿信 様・知子 様 夫妻です。ご協力頂きありがとうございました。
 「ロングステイ」ということばを聞いたことがありますか。人生80年といわれているこの時代に、人生の後半をより豊かに過ごすためのあらたなライフスタイルとして、「ロングステイ」が脚光を浴びています。ロングステイとは、経済産業省認可の公益法人「財団法人ロングステイ財団」が提唱する「海外滞在型余暇」のことを指し、「海外の一箇所に比較的長く滞在し、その国の文化や生活に触れ、現地社会の貢献を通じて国際親善に寄与すること。」と定義づけられています。
ここで注意することとして、ロングステイは「移住」や「永住」ではないということ。あくまでも生活の源泉は日本に置きながら、海外のひとつの地域に2週間以上滞在することを意味しています。
 
 従来、私たち日本人の旅のスタイルは、観光地から観光地へと名所旧跡を訪ねる物見遊山型が主流でした。ところが、長い休暇を利用する欧米人の生活滞在型バケーションスタイルが、近年日本人にも定着するようになったのです。滞在期間が長期に及ぶロングステイは、もっぱら仕事をリタイアしたひとに受け入れられている傾向にあります。若いころ叶えられなかった夢、やってみたかったという願望を実現させるためにロングステイを実践する夫婦が増えてきました。また最近では、子育てを終えた主婦が趣味の研鑽を目的に海外で長期滞在をしながら技術を学ぶといったことも盛んに行われています。
 欧米のビジネスマンには、そもそも「定年退職」という概念がありません。自らが引退時期を定めハッピーリタイアメントをするのです。それまでを懸命に働き、第二の人生のスタートを切るわけですから、周りの家族や関係者はその船出を温かく祝います。
 かつて、「日本型経営」といわれた終身雇用制度を廃止する企業が増えてきました。今後はわたしたち日本人のあいだにも、こうした欧米的ハッピーリタイアメントの思想がますます流入すると考えられています。

 それではいったい、ロングステイにはどのような楽しみ方があるのでしょうか。ある男性は、朝から晩まで「ゴルフ三昧」をしたいといって、プレイフィーの安い地域でロングステイを楽しみます。またある女性は、趣味が高じて「フラダンス」を学ぶために本場・ハワイでのロングステイを志してお弟子さんをかかえるまでに上達しました。
 ロングステイの目的理由を集計した結果、第一位に「その土地の生活や習慣に触れる」ことがあげられました。ロングステイでは自炊が基本になります。ですからその土地の料理を習い現地の食材を用いて実際に調理する、といったひとを多く見かけます。 
 第二位は「大自然とのかかわり」です。希望滞在国の上位に上がる国々のほとんどが「海」や「山」といった大自然を満喫しつつも、生活に便利な「都市型の機能」を兼ね備えている滞在地を選択しています。
 さらに第三位は「現地のひととの交流」ということで、日本語や折り紙を教えるといったボランティアや語学留学にチャレンジするアクティブシニアが目立ちます。こうしたひとたちは日本の小さな親善大使の役割を果たしています。
 そのほかにも歴史や芸術を学びたい、ダイビングやトレッキングにチャレンジしたい、ということでロングステイを実践しているひとが多いのです。
 ロングステイの「好敵地」とされる都市には、いくつかの共通点があります。「治安」がよくて、「気候」が温暖、できれば「英語圏」で「親日的」、しかも「物価が低い」といった点です。ちなみに滞在希望地の第一位はオーストラリア。日本との時差がわずか1時間と、時差ぼけに悩まされることもありません。ユニークな生態系にも恵まれるオーストラリア大陸はまさに自然の宝庫です。
 調査結果の第二位は、世界有数のリゾート地であるハワイです。どこのスーパーマーケットにも豆腐やたくあん、油揚げ、アロハ納豆があたりまえのように陳列されていますが、手軽な値段でわたしたちがいつでも購入することができるその背景には、祖国の味を懐かしんだ日本人移民の歴史があるからだと気づかされます。公共交通機関を利用することも、ロングステイの基本です。滞在費が高いワイキキ地区をあえて選んだという熟年夫婦の話を聞いたことがありますが、市バスが通りタクシーも多く医療機関や日々の買い物に不便をしないという理由からだそうで、納得させられました。レンタカーを借りると、いっきに生活費がはねあがるのです。
パース駅 モノレール マーケット
屋台 日本語医療センター
 そのほかにもカナダやニュージーランドが人気ですが、最近ではマレーシア、タイといったアジアの諸国も注目を集めるようになってきました。物価が日本の三分の一、五分の一ときけば、年金の範囲内で十分にゆとりある暮らしができます。こうした地域でロングステイをする際には、できるだけ下見旅行に出かけることをお勧めします。銀行や郵便局、日本食材店を見学し、実際にバスや電車などを利用して生活体験をします。滞在が長期であれば現地の銀行で口座を開設する必要があります。宿泊施設もいくつか回り、自分たちのライフスタイルにあった滞在先を選定することが重要です。
 
 わたしたちは「より長期の旅」、「よりクオリティーの高い暮らし」を求めてロングステイにたどりつきました。素晴らしい人生の1頁を、ロングステイは彩り鮮やかに飾ってくれることとなるでしょう。ツーリズムの基本に「住みたい国にひとは来る」ということばがあります。旅先で「ああ、こんなところに住んでみたいなあ」と感じたことがあるのではないでしょうか。そうした夢を実現させたいという思いで、ロングステイを実践するひとが多いのです。
 有限会社インペリアル・チエコ
代表取締役 千葉 千枝子


 
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