5. 東海岸:ヴィークから、氷河湖見物をしてドューピボーグルへ

 27日(金)朝8時40分にホテルを出る。ホテルの前の海の岩は昨日ディラホゥラエイから見えた風景の反対側からのものである(Jo1)。すぐ前にあるガソリンスタンドで、ジーゼル油10 Lを補給しカードで支払う(この車は、ジーゼル油専用)。価格は、1 Lが190.2 IKで252.1円/Lの請求があった。ジーゼル油は使ったことがないのでよく分からないが、レギュラーガソリンより高い。なぜ、高価な油をこの国産車(Sjova社)が使うのかはよく分からないが、燃費がよい。油が高価なのは、税率が高いためであろう。
 ルピナスの群生が多いが、これは、この草が、瘠せた溶岩土でも育ち、それがやがて、枯れて土となって牧草が育つようになるため、積極的に植えているそうである。いずれにせよ、大変美しい花なので、ラヴェンダー平原より美しくさえ感じる(Jo2)。
 最初の主な集落のキルキュバイヤルクロイストゥル(Kirkjubajaklaustur)という舌を咬みそうな名前の土地には、LP(ロンプラ)によれば、Kirkjugolfという場所に、苔むした玄武岩があって、かって教会の床であったと間違って思われたものがあると書いてあるので行ってみる。ゴルフ場のようなものは見つかったが、その玄武岩の柱は見つけられず、代わりに、近くにあったショルナール滝(Stjornarfoss)(Jo3)を見てくる。長閑な風景で、なかなか美しい滝であったが、勿論、観光客などは皆無であった。
 ここを過ぎてしばらくいくと左側に長方形の側面を持った岩山がある。どういう条件で形成されたのかは素人で分からないが、珍しいので写真を撮る(Jo4)。ここから10分ぐらいで、ロゥマグヌープル(Lomagnupur)の767 mの絶壁のすぐ脇を通る(Jo5)。このあたりは、ヴァトナヨークトル(Vatnajokull)というヨーロッパ最大の、国土の8%を占める大氷河の南側に当たる。
この絶壁から40分ぐらいして、スカフタフェットル(Skaftafell)に来る。ここには、往復1時間半の徒歩で行けるところに、スヴァルティフォス(Svartifoss)という滝があって、玄武岩の柱状節理が美しいことは知っていたが、今日泊まるドューピボーグルまでの道が難所である可能性が大きいので、ここには立ち寄らないことに決めていた。後から考えれば、予想したよりスムースに進めたので、ここに立ち寄れないことはなかった。
ヴァトナヨークトルの末端(正式名かどうか知らないが、舌というらしい)には、それぞれ違った名前が付けられていて、1号線の近くに最初に見える、この氷河の端の1つのスカフタフェットルヨークトル(Skaftafellsjokull)が見えてくる(Jo6)。ヴァトナヨークトルは、最深部は1000 mで、平均は400 mもあるそうである。氷河の底は、活発な火山地帯である。1996年9月29日に、この大氷河の中のグリムスヴェトン(Grimsvotn)という所で、マグニチュード5.0の地震が起こり、翌日には、爆発が起こり、10 kmの高さの水蒸気柱を吹き上げた。この爆発は、予想されたように、溜まった水が約1ケ月後(11月5日)に溢れ出て、この一帯を襲い2つの橋を流し、南部と東部を結ぶ国道1号を分断してしまった。しばらくは、レイキャヴィークから東部に行くには、反対の西側から1号線を大回りしてこなければならなかった。火山の熱が氷河をとかして大洪水を発生させる現象は、専門家の間でヨークルフロイプ(jokulhlaup)と呼ばれている。ヨークルフロイプの堆積物は,比高2m程度の小山はあるが,平坦で水平に近い地形をつくる.表面には巨礫が散在している.このような地形をサンドル(Sandur)という。この写真(Jo7)にあるSkeidaraは、Skeidararsandurの中心部で、周りは広大なサンドルが展開する。ヴァトナヨークトル氷河の下は、何時爆発するか分からないから、ヨークルフロイプは、また何時起こるかも分からない。スカフタフェットルヨークトルから、10分もしないでスヴィナフェットルヨークトル(Svinafellsjokull)が見える。ここには、近づける道もあった(Jo8)。さらに30 分ぐらい行くと、クヴィアールヨークトル(Kviarjokull)が見えてくる(Jo9)。
やがて、急に開けた所に出て、長い橋を渡るところに来て、ヨークルサゥルロゥン氷河湖(Jokulsarlon)に来たことを知る。ここの、名物の水陸両用ボート(Jo10)に乗ることが今日のメインイヴェントと考えて来たので、早速、止まって乗車券を購入する。小屋で切符購入ができるものと思って入ったら、外にいる黄色いゼッケンを着けた人から買えといわれて、現金で購入する。1人2400 IKであった。チケットはクジにもなっていて9月15日に、www.icelagoon.isを見よと書いてある。このボートはどのくらいの頻度で出ているか分からず、ここに、何時に着くかも分からなかったので、東京出発前に切符を購入しなかったが、それでよかった。
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Ca1
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ほとんど待つことなく、水陸両用ボートに乗れた。乗船すると、救命着が配られて、これを着る。100 mほど陸を走行して、そのまま、氷の浮かんだ湖に入る。いろいろな形をした氷塊が湖に浮かんでいて面白い(Jo11)。「007」(“Aview to a kill”(1983)と”Die another day”(2002))のロケも行われたことがあるだけあって、今まで見たことの無い異様な光景である。アザラシが遠くで1度、首を出したが、写真は撮れなかった。この湖はすぐ、海に接しているのでアザラシもいて、塩分もある程度あるらしい。観光船1隻にモーターボートが、先案内を兼ねて走り回っている。一説によれば、観光船が、氷塊に衝突しないように誘導しているというが真偽のほどは知らない。そのモーターボートが、氷の塊を採取して、ガイド嬢に渡し、ガイド壌は小さく割って、全員にくれる(Jo12)。1000年経過した氷であると説明するが、本当かどうか分からない。8年前に出た「アイスランド何処ドコ紀行」では、ガイドが2000年前の氷と言ったと書いてある。この10年で1000年若返ったことになる。ひょっとして(むしろ、高い確率で)、この冬に出来た半年モノかも知れないが、不当表示でも誰も被害を被らないから、夢がある方がよい。氷の回りも塩分は感じず、普通の美味しい氷であった。ガイドにこの氷の密度(density)はどれくらいかと聞いたら、densityの意味が分からず、ちょっと驚く。夏の間のアルバイトなのであろう。水温4 oCの水に浮いていたのだから、密度は、1 g/cm3以下なのであろう。前年、カナダのマリーン湖のボートトリップでも、表面の温度は年間4 oCで変わらないと言っていたのを不思議に思ったが、ここでも同じようなことを言う。湖底の水温が、4 oCで変わらないというなら科学の理屈にあうはずであるが。
約45分間のボート観光の後、近くの小山に登ったり、橋を戻って、対岸の小山に登ったりして、周りの景色を眺めながら、写真を撮る(Jo13)。海に繋がる川からも、氷塊が、海の方向に流れている。氷齢1000年の氷が、どんどん海に流れ出るわけがないから、やはり、ここに浮いている氷は、比較的、新しいものだろうと推測する。
まだ、先は長いので、ドライヴを続ける。10分ぐらい走ったところに、この湖に最も近い村落がある。この湖とは対照的な長閑な村落である。道から見えるところに、百科事典の背をデザインした建物が見える(Jo14)。何かと思って、脇道に入って近づいてみたら、博物館兼レストランであった。こんなところに、博物館兼レストランがあって、1日何人は入るのか不思議に思う。アイスランドで有名な作家Torbergur Todarson(1888-1974)が、この近くの出身なので、それを記念して建てた博物館で、彼の育った家などの模型もあるらしい。レストランは客がいないらしく、従業員嬢が、外に出て周りの掃除をしている。福祉国家だから、利用客が少なくても、税金を投入して運営ができるのだろうと感心する。
 先を急いで、途中の割合大きな町のホプン(Hofn)は、立ち寄らなかった。その先に1 kmぐらいのトンネルがあった。本日の道程で唯一のトンネルを出て、20 分ぐらい行ったところで、遠くに、ちょっと形の変わった山が見える(Jo15)。名前はよく分からない。その先に行って、全ドライヴを通じて一番の難所に差し掛かる。道自体は、そう悪くないが、急な斜面に道をつけているので、いつ落石があるか分からないのが怖い(Jo16)。実際、そこは、崖側には、落石防止のフェンスのためにネットに入れた石が並べてあった(Ca1)。工事の車両が来ていたから、落石防止の工事をしているに違いない。
 ようやく、19時5分にドューピボーグルのホテルに着く。401 km走行していた。150 mほど離れた別館に案内してくれる。10畳以上の広さの専用ダイニングキチンがあるので、そこで日本から持ってきた材料で食事を作り食べる。
 食事後、部落を車で走ってみる。非常時用の飛行場があり(Jo17)、その端まで走り、歩いて、海の水温を計ったら10 oCであった。他に、もう一台車が来て、男性が砂浜でジョギングをしていた。この旅行を通じて、大西洋に触ったのは、この時だけであった。次に、アンテナの立っている高台に登って町を見渡すと、我々の泊まっているホテル別館も見える(Jo18)。LPによれば、人口360人だそうである。
 21時45分にホテルに戻る。結局、本日は、407.9 km走行した。このホテルには、無料で使えるネットがあり、東京を出て以来初めてメールを開いてみる。緊急の用事は無かったが、12時過ぎまで、対応していた。電気のスイッチが見当たらないので、電気をつけずに済ましたが十分明るかった。
写真説明
Jo1 ヴィークのホテルの前の岸壁
Jo2 ルピナス原野
Jo3 ショルナール滝
Jo4 面白い形の岩山
Jo5 ロゥマグヌープルの絶壁
Jo6 スカフタフェットル氷河
Jo7 スカイザーラ
Jo8 スヴィンナフェットル氷河
Jo9 クヴィアール氷河
Jo10 氷河湖見物用の水陸両用車
Jo11 水陸両用車から見るヨークルスアゥルロゥン湖
Jo12 氷河湖から取った氷の説明;割って参加者に配る
Jo13 小山から見た氷河湖
Jo14 百科事典をデザインした建物の博物館
Jo15 名前不明の形の面白い山
Jo16 ドューピヴォーグルへの手前の落石危険道路
Ca1 借りた車(Octavia;4輪駆動);東海岸の落石防止石嚢もある
Jo17 ドューピヴォーグルの海岸にある非常時用の空港
Jo18 高台から見た町;灰色の大きな屋根の温泉プールの先のL字屋根がホテル