IV. アイスランドのプロフィール

アイスランドに関する種々な話題の遠慮のないやりとりは
http://academy6.2ch.net/test/read.cgi/whis/1033592458/で見られ、いろいろな知識を得ることができる。

●歴史概略
 4世紀ごろから、人間が住んでいたらしい。最初のヴァイキングの定住者は874年(または870年)に来たインゴウヴル・アルトナルソン(Ingolfur Arnarson)である。870-930年は定住の時代といわれ、ノルウェー、スコットランド、アイルランドから、1-2万人も来ていたといわれる。930年に、各地方の代表が、議会平原を意味するシンクヴェトリル(Tingvellir)に集まり、アルシングという全島議会を開いた。共和国の時代は1262年にノルウェーの支配下に入るまで続いた。この間、962年には、流刑にあったエイリークル・ロイジ(通称、赤毛のエイリーク)がグリーンランドを発見する。1000年には、その息子のレイブル・エイリークソンがアメリカ大陸を発見する。
 1380年に、ノルウェーがデンマークの属領となると共にデンマークに編入される。1904年に自治権を得て、デンマーク主権下の独立王国となる。独立運動の主導者ヨゥン・シグルズソンなどの努力から、1944年6月17日に、アイスランド共和国が誕生した。それで、この日が建国記念日となっている。1980年には、世界最初の女性大統領として、ヴィグディス・フィンボガドゥティルが就任し、16年間、その地位にいた。

●面積と人口
広さは、北海道と四国を合わせた程度で、人口は、約30万人で、日本の約1/400で、面積が約1/4なので、人口密度は日本の約1/100で、3人/km2であり、人口の6割は、首府レイキャヴィーク近郊に住んでいるので、地方は、あまり人が住んでいない。

●気候と日の出・日の入り
レイキャヴィークの6月23日の日の入りは0:00amで、日の出は2:59amで、日の入り後も、薄明るいので、実際には、24時間、明るい。気温もそこそこ高かった(大体、滞在中の平均気温は、10 oCで、最高でも16 oCぐらいであった)。首府レイキャヴィークの緯度は、北緯64oで世界の首府の中では最も北にある(因みに北極圏は66.6o以北)。一番温度の高い7月の平均最高気温は、14 ℃、最低気温は、9 ℃で、低いが、一番温度の低い1月の平均最高気温は、2 ℃、最低気温は、- 2 ℃で意外と高い。
白夜があるということは、逆に、冬はほとんど真っ暗ということになる。どういう生活をしているのか興味があるが、聞く機会がなかった。お化けがでるという話をよく聞くが、人口が少なく、暗ければ、当然だろう。国民は世界一、読書家であり、人口30万人強なのに、10万部も売れた推理小説があるし、古本屋も繁盛しているというのをNHKのテレビで最近見た。

●エネルギー事情 
 「氷と火の国」といわれるだけあって、温泉の泉源は全国に約700ケ所あり、川や滝も多く、したがって、電力は水力と地熱だけで十分賄われ、90%の家庭には、温水が配給され、持続可能なエネルギーに大変恵まれている。その結果、主たる産業は、漁業から電気の缶詰といわれるアルミニウム生産に変わりつつあるそうで、ダムの建設はますます進み、自然破壊が、問題になってきている。一方、オイルと石炭は、輸入に頼っていて、極めて高価である。

●主な産業
つい最近まで、主な産業は漁業であった。以前は、日本で、アイスランド産シシャモというのもよく目にした。シシャモは、アイスランドでは食べない一方、日本にいくらでも輸出できるので乱獲したら、これを食べていたタラが激減したので、採るのを止めたらしい。アイスランド観光文化研究所のネット情報では、2008年は貿易収入においてトップの座を維持してきた漁業に代わってアルミニウム生産がトップの地位についたそうで、豊富なエネルギーを利用したアルミニウムの生産は、今後益々伸びるであろう。
日本、ノルウェーなどと共に、伝統的に捕鯨を行う国であるが、現在は、微妙な立場にある。1992年以来、国際捕鯨委員会(IWC)を脱退していたが、2002年に、一票差で再加盟が承認され、「調査捕鯨」を行っている。一方、1995年以来ホエールウオッチングが開始され、2001年には、6万人以上の旅行者が参加し、90%は外国人であった。捕鯨問題は、日本と同様、国際的な反対運動にあい、将来どうなるか見通しが立たない。
馬は、この国では食べないらしいが、日本では、老馬の肉が馬刺しとして好まれ、輸出しているそうである。
NATOに加入しているが、軍隊はない。国民の約1/3が公務員であり、失業率は2%程度で低い。
少し古いが、アイスランド経済の解説がネットで見られる。
http://www.geocities.co.jp/SilkRoad-Ocean/3759/preknowledge/economic/economic.html

●GDP
IMFの統計では、昨年(2007年度)の、国民1人あたりの所得(GDP/人)は、世界第4位で、世界22位まで落ちた日本よりは、大分上である。物価が約2倍高いということと同じことかもしれないが、北欧5ケ国が全てベスト10に入っているというのは、やはり、国民と政治家の知恵の賜物と思う。
消費税率は、2007年9月現在、1位はスウェーデン、デンマーク、ノルウェーで25%、4位はアイスランドで、24.5%で、極めて高率である。もちろん、これらの国は、北欧型社会主義の国で、社会保障費に使っている。

●DNA登録
ネットで確認したが、全国民30万人のDNAが登録されている。全国民のDNAが登録されている国は、今のところアイスランドだけである。

●婚姻外出生
NHKのフランス語講座のテキストに書いてあったが、婚姻外出産の割合は、ヨーロッパの多くの国で増加中で、2005年度に、アイスランドが世界一で、65%だそうである。因みに、2位はスウェーデンでは55%、順位は書いてないが、フランス48.3%、イギリスでは40%近く、アメリカは30%に近く、日本では皆無に近い。

●アルコール消費
国民1人当たりのアルコール消費量は、2000年―2001年の統計では、アイスランドは、5.7 Lで、29位で、(日本は、7.4 Lで、26位)、2005年には、7.05 L(内訳:ビール73.95 L、ワイン15.46 L, 蒸留酒 3.50 L)で上昇しているが、先進国としては、低く、しかも、低アルコール度のビールが多い。これは、税率が極めて高いためと考えられる。

■表 消費エネルギー内訳

PJ(1015 J)

内訳(%)

合計(%) 

国内生産

110.2

71.3

  水力

 25.2

16.3

  地熱

 85.0

55.0

輸入

 44.4

28.7

  油

 40.1

25.9

  石炭

   4.3

 2.8

合計

154.6

100









■表 1人当りのGDP(2007)

順位

国名

GDP/人(US$

1

ルクセンブルグ

104,673

2

ノルウェー

83,923

3

カタール

72,849

4

アイスランド

63,830

5

アイルランド

59,924

6

スイス

58,084

7

デンマーク

57,261

8

スウェーデン

49,655

9

フィンランド

46,602

10

オランダ

46,261

~

22

日本

34,312

■表 平均寿命

男性

女性

順位

年齢

男女差

順位

年齢

1

アイスランド

79.5 (79.4[07]

3.7

日本

86.3 (85.99[07])

2

香港

79.2 (79.3[07])

5.9

2

香港

85.1 (85.4[07])

3

日本

79.1 (79.19[07])

7.2

3

スペイン

83.7 (83.48[04-05])

4

スウェーデン

78.6 (78.94[07])

4.3

3

スイス

83.7 (84.0[06])

5

オーストラリア

78.4 (78.5[04-06])

4.8

5

イタリア

83.5 (83.72[5])

6

イスラエル

78.3

4.2

6

フランス

83.4 (84.1[3])

7

スイス

78.2 (79.1[06])

5.5

6

オーストラリア

83.4 (84.0[4])

8

カナダ

78.1 (77.8[04])

4.9

8

アイスランド

83.2

9

ノルウェー

77.7 (78.24[07])

4.8

9

カナダ

83.0

10

ニュージーランド

77.6 (78.1[05-07])

?

10

スウェーデン

82.9


括弧(  )内の数字は、日本の厚生労働省が、08731日に発表したもので、一部は、翌日の新聞にも紹介された。[  ]は、統計の取られた年。

●平均寿命
2007年度の統計では、男性に関しては、アイスランドは79.5歳(あるいは別の統計で79.4歳で世界一になった。2位は香港(正確には国ではない)、3位は日本である。女性は、1位は日本、8位がアイスランドになっている。
ついでに、男性の長寿国について(女性―男性)の差について、「男女差」の欄に示した。いずれの国も女性の寿命が男性の寿命を上回ってが、明らかに、何か、先天的な性差があるのだろう。その差は、日本は異常に大きく(世界21位)、その原因は、女性の寿命が非常に長いことが原因で、独断と偏見で解釈すれば、日本の女性は、これまで、専業主婦が多かったので、肉体的、精神的ストレスが少なかったためと思う。一方、アイスランドはその差が、小さいこと(約115位)が特徴であるが、これは、この国の人口密度が低いために、男性が、勤務であまりストレスを感じないですむためと、アルコールや煙草が高価なので、男でもアルコールをあまり飲まなかったり、喫煙が少ないためと推測される。因みに男女差の統計で1位はロシアで、13.1歳、2位ウクライナ12.0歳、3位ベラルーシ11.4歳などとなって、旧ソ連の国がほとんど上位を独占している。
これは、強いアルコールがいかに生命を短縮しているのかを表していると思う。
 
 
●温暖化の影響
北極海やグリーンランドの氷の融ける影響が心配されている。サバやナマズなど、今まで獲れなかった魚が取れるようになったり、イカナゴの減少からかパフィン(この国では、これを食用にもしている)が少なくなったなどの現象が見られる。また6月に続けて、2件北極熊が上陸した(1頭は射殺され、2頭目は麻酔銃で捕獲して、動物園に送られた)。20年ぶりのことだそうである。一方、電力は全て、地熱と水力で賄っているので、ほとんどニ酸化炭素の排出問題はない。この国にとっては、温暖化問題よりも、いつどこで起こっても不思議ではない火山の爆発の方がずっと問題であろう。私見であるが、この国にとっては、温暖化はむしろメリットの方が大きいのではないのではないか。
●世界遺産
 シンクヴェトリル(古代民主議会発祥地とギャウ)と最近登録されたスルツェイ島(Sturtsey)(参考図書の竹内均著「アイスランド紀行 燃える島」に生成の様子が詳しい)がある。国土全体が世界遺産のようなものであると思う。
 
おわりに
 旅行に際して、ネットで見た旅行記の情報が大変役立った。したがって、新しい情報を書くのは、自分の務でもあろう。その意味では、東部地区の新しいトンネルの開通と、その裏にあるアルミニウム工場の新設は大きな出来事であろう。これについては、印刷物では、まだ情報を見たことがない。また、昨年(2007)秋に建設された小野洋子さんのイマジン・ピース・タワーも、特に、日本人には、紹介すべき事項であろう。
 アイスランドは、日本からは遠く、物価は非常に高く、観光シーズンは短く、我々の行った最高のシーズンでも、温度は平均10 oC、最高でも15 oCぐらいで寒く、天候は、変わりやすくあまり良くない。インフレも進んでいるらしく、前年のパンフレット類にある入場料は、大抵、1-2割は高くなっている。(円への換算率は、1時は1 IK=1.75円であったのが、行ったときは、1.40円以下になっているのは助かった。)
しかしながら、この時期、ほとんど完全な白夜で、温泉も各所にあり、今まで見た国の中では一番美しい自然があり、他に類を見ない国と感じた。車から見る風景も意外に変化に富んでいて、飽きない。人間が少なく、大変親切で、治安がよく、旅行者にとっては、何の心配もない癒される国である。オーロラの季節にも、また訪問したい気がする。