其の5
●世界遺産のサン・テミリオン(St.Emilion)を通りペリグー(Perigueux)へ
  翌朝、彼の家を辞して、ぺリグーの方向に向かう。シラノ・ド・ベルジュラックで知られるベルジュラック(Bergerac)は、ペリグーの西南50 km弱のところにあることを知る。途中、これま
たワイン産地として有名な、世界遺産のサン・テミリオンに立ち寄る。この地のブドウはメルロー種(Merlot)で、メドックのカベルネ ソーヴィニョン種(Cabernet Sauvignon)より、渋みが少な
いと言われている。この町の主だったシャトーのオーゾーヌ(Ausone)は、見学を許していないので、外から眺めるだけにした。当地のもう1つのA級格付けのシュヴァル・ブラン(Cheval Blanc)は、やや遠いので見に行か
なかった。小さな町であるが、ワイン販売店が並び、価格などが表示してある。例えば、ボルドーで一番高価なペトゥリュス(Petrus)(ポメロー地区)の価格は、年によって違うが、1974年のものが一番安く、それでも453 Euroもして、1946年
ものが一番高価で、4174 Euro(約60万円)し、2003年ものでも、1423 Euroもする。日ごろ飲むことのできるものより2桁も高価である。特殊なバーなどでこの値段で出すことは、聞いているが、小売でこんなに高価なのは知らなかった。このサン・テミリオンは、行ったときは、訪問客より、店の数の方が多かった。町(人口:約3500人)の中心のモノリッツ教会で、絵になる町にしている(写真20)。カタコンベ見学などは、ガイドツアーになっていて、待たねばならなく、カタコンベはあまり見たくないので、町を後にする。次に、途中にあるモンカレー(Montcaret)のローマ時代の遺跡発掘場所を金網越しに見たが、中には、入らなかった。
今回の訪問先の目玉の1つのラスコーに行く拠点であるペリグーにホテルを予約していた。この地にも、ローマ時代の塔などが、残っている。たまたま、リセ(中・高校)の前を通ったら、校門のすぐ前の学校の敷地内で、学校帰りの若者が、たむろしていた(写真21)。日本なら、少なくとも校門の前では、このようにたむろすることはできないであろう。フランスでは、この歳でタバコを吸ってよいのかどうか知らないが、この国でも、教師も、将来も大変なことが想像される。
●ラスコー(Lascaux)の洞窟見学
ラスコーの洞窟を見学するには、そこから、2kmぐらい離れたモンティニャック(Montignac)の観光課で、予め時間指定の入場券を購入しなければならない。ぺリグーを8時50分に出て、10時ごろに入場券売り場に着いた。入場券は、幸い、あまり待たない時間のものが、購入できた。入場料は大人8 Euroであった。トー(Thot:6 kmぐらい離れた場所で、先史時代の怪
獣などの博物館があるらしい。)と組で、10 Euroであったが、ラスコーだけにする。本物のラスコーの洞窟は、洞窟の絵が傷むのを防ぐために1963年に閉鎖されてしまったが、1979年に、200m離れたところにそのレプリカが作られ、ラスコーIIと称され公開されている。ラスコーIIは、森の中にあって、数十人が並んでいた。フランス語ガイドの組と英語ガイドの組があり、1組20人ぐらいずつで、我々と一緒の組の大半はアメリカ人であった。日本人は、いなかった。大変残念なのは、前年スペインで見たアルタミラ(Altamira)の洞窟のレプリカのように、中でのカメラ撮影はフラッシュ無しでも禁止されていることである。したがって、外の看板の写真しか撮れなかった(写真22)。見学は約1時間であった。1940年に発見されて、約1万8000年前に描かれ、アルタミラのものより古いらしいが、もっと古いものも、フランスで発見されているらしい。レプリカは、本物の7割程度を再現しているとのことである。この複写にも感心する。
20 kmほど離れたアブリ・デュ・カップ・ブラン(Abri du Cap Blanc)に、洞窟絵の本物があるので、見に行く。ここも1時間ごとに、ガイドツアーがあるが、我々の行ったときには、英国人の家族1組しかいなかった。ここは、大きな1部屋しかないが、写真を撮ってはいけないのが残念であるが、馬の大きさは、ほぼ実物大である。
 ここに来る途中、フォン・デ・ゴーム(Font-de-Gaume)にある洞窟にも、昼過ぎに立ち寄ったら、1日150名の入場で締め切ると書いてあり、その日は、もう締め切られていて見られなかった。
 この後、近くの古い街、サルラ(Sarlat)に立ち寄る。ここは、かなり大きな町で、店も多く、賑わっている。観光案内所は、旧市街の真中にあり、あたりの建物はかなり古そうであった。
更にその北にある、フランスで最も美しい庭園の1つといわれるエイリニャック(Eyrignac)の館庭園を訪問する(写真23)。ここも、ガイド付の訪問で、フランス語のみであったので細かいことは分からなかったが、庭の美しさを観賞するのに、そう言葉は要しない。サルラや、この庭園については、手持ちの日本の案内書には出ていなかった。
 夜は、カオール(Cahors)の郊外の街道(N20)に面するホテル(Le Belle Vue)で泊まる。この個人経営の、田舎のレストランも兼ねるホテル(Le Belle Vue)で、夕食も取る。レセプションにはオ
ウムを飼っていて、時々大きな声を出して驚かせる。
●パディラック(Padirac)の大洞窟
何故か、日本の案内書にはあまり出ていないが、自然の岩山の中に建造物がうまくマッチした、特に遠くからの景観のすばらしいロカマドゥール(Rocamadour)に行く(写真24)。上空には、観光用か、大きな飛行船が浮いていた。麓で駐車し、山の頂上に登り、そこの教会から、あたりの景色を見た後、下って、その途中のノートルダム教会の黒いマリア像を見る。
その近くのパディラックに大きな洞窟があるので、見に行く。この地は、自分の持っている案内書には何も記載がないが、最初に述べた阿部氏の旅行記で存在を知って、多少、ネットで調べて、行く気になった。石灰岩台地に周囲99 m、深さ75
mのほぼ円筒形の穴が開いている(写真25)。どのようにして、こんなに深い穴ができたのだろうか。隕石でも落ちたのであろうか。この自然の不思議さは、そう、あちこちで見られるものではなく、勿論、今回の旅行では、一番感動したものであった。底から2km程度の川が流れ、そこの700 m程度を船で遊覧する。この洞窟も写真撮影は禁止されている。
地底のボード遊覧の最中に写真を撮り、販売しているので、購入する(写真26)。こんなに大きな穴なのに、正式に発見されたのは、割合新しく、1889年に洞穴学者のEdouard-Alfred Martelによって発見されたそうである。今
まで見学した洞窟の中では、ベルギー南部にあるアン・シュル・レッス(Han-sur-Lesse)が一番大きく、そこもボート遊覧があったが、ここは、規模でもそれを上回る。
次にカオール(Cahors)に行く。ロット(Lot)川にかかるヴァレントレ(Valentre)橋が見所というので、見に行く(写真27)。この橋は、14世紀に、英仏の100年戦争(1339-1454)に備えて70年かけて造られ、要塞を兼ねていた。橋の近くにあるワイン販売店で、この地方の名物の黒ワイン(vin noir)などを購入する。正式には黒ワインという名称はないが、赤ワインが
濃くて、一見すると黒いので、こういう名で呼ばれているとのことである。
 カオールから東に30km行ったところに、サン・シルク・ラポピー(St.Cirq-Lapopie)という崖の上の村があって、フランスで一番美しい村の1つに指定されているというキャッチフレーズにつられて行ってみた。名前の響きも良い。有名らしく、観光バスなども結構来ている。ロカマドゥールを見ていたので、それほど感激はしなかった。アルビから20 km西北にも、コルド・シュル・
シェル(Cordes sur Ciel)という真珠の要塞といわれる美しい村があるが、見に行く時間がなかった。
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20)ワインの町 サンテミリオン
 中央に見えるのがモノリッツ教会

21)ペリグーのリセの校門前のジベタリアン

22)ラスコーU洞窟の案内板
 残念ながら内部の撮影は禁止

23)エイリニャックのフランス式庭園

24)谷を隔てて見るロカマドゥールの町

25)パディラックの洞窟
 穴の深さ75mの入り口を上部より見た景色。
 エレベーターと階段を使って降りていく


26)パディラックの洞窟のボート遊び
 
27)カオールの要塞 ヴァレントレ橋