●サーモン養殖所とスターウォチン 2月14日(火)

昨日、マウントクックを堪能でき、本日は、雲が多いとのことで、行くのを止めたので余裕のある日
となる。トゥワイズル付近には6つ以上の湖があるので、いくつかを巡ってみる。モテルでもらった
地図が読みづらく、うまく行けなかったところもあったが、美しい湖を見たり、町の近くのサーモン
養殖所(High Country Salmon)を見たりした。湖はどこもほとんど誰も来ていない。近くには、運河も
あり、水が豊富で水力発電所もある。他でもそうであるが、水力発電所には、人影がない。次の
宿泊地テカポまでは幹線道路を行くと、45分で着くというので、より景色の良いというプカキ湖沿い
の道をとり、別のより大きいサーモン養殖所(Mt. Cook Salmon)を目指す。途中、右側に山を登る道
があったが、サーモン養殖所は左手の湖にあるに違いないという先見で、左側の道を選んだ。
やがて舗装はなくなったが、道は、2車線なので、疑いなく進んだが、前後、対向車はまったくない。
サーモン養殖所まで道の入り口に12kmと書いてあったが、それを過ぎても一向に着かない。
そのうちに、行き止まりになったが、柵の扉(動物を囲むためのもの)の先には、未だ道が続いている。
それで、開けて更に進む。また1つ扉があったが、開けて進んだが、山道になって、道の真ん中の草が、
車の底を擦るようになって、これ以上は行けないと思って、引き返す。途中、チーズ工場みたいなもの
があり、道を聞こうと入ったが、無人で、廃墟のようである。更に、道から、見えるところに別荘みたいな
建物があり、窓のカーテンが開いているので、道を尋ねに入ったが、無人であった。アメリカなら、人の家
に道を聞きに入るだけで、射殺される危険もあろうと一瞬思った。しばらく戻ったら、道いっぱいに100頭
は越すと思われる羊が現れ、こちらも、羊も驚く。羊の後方を見ると、トラクターと犬で、青年が羊を追って
きている。車を止めていると、羊も動かないので、すこしずつ進む。羊は群れを成して谷側に避けて前に
進んでくれた。トラクターのお兄さんに、サーモン養殖所への道を聞くと、20kmぐらい先の分岐点を山側
に行けとのことであった。この図1に示す無料の地図では迷い混んだ道がはっきり描いてあるが、購入
して使っていた地図には、迷い混んだ湖沿いの道が出ていなかった。教えられたとおり行ったら、山と
思われた上側は平坦になっていて、運河があり、そこにサーモン養殖所があった。入場料は3ドルで、
パウチに入った説明書2枚とボールいっぱいのチョコレートと称する動物か魚の肝臓の小粒チョコレート
状の餌を渡される。10ケぐらいの生簀に年齢別にサーモンが養殖されている。生簀の中では、サーモン
が速い速度で回遊している。餌を投げ入れると、争って食べる。鮭も若いほど元気が良い。沢山いる
から、1匹当たり1回でせいぜい2粒ぐらいしか口に入らないと思うが、こんなに動いて餌で得る
エネルギーより多く消耗するのではないかと心配になる。ノルウェーのサーモン養殖所で、ガラス越し
に横からみた鮭は、体に黄色い斑点があったし、この辺の養殖所で上からみると真っ黒だし、魚屋に
ある新巻鮭と、とうてい同じものとは見えない。鮭は、不思議な魚と言われるが、自分の頭の中でも
不思議な魚である。
テカポに着いて、街道沿いのホテルにチェックインする。案内書や新聞広告で有名な、「善き羊飼い
の教会」に行く。ホテルから歩いて5分とかからない。小さな教会で、その窓が祭壇になっていて
小さな十字架があり、窓からは、テカポ湖と遠くのサザンアルプスの山々が見える。御殿場にある
上智大学のオリエンテーションキャンプにも使われる宿泊施設の一角にある礼拝堂が同じ趣向で、
祭壇の窓越しに真正面に見事な富士山が見える。これが、ここを真似したのか、あるいは同じ
趣向のものが世界のどこかにあって、それをこれらが真似したのか、あるいは独自の発想で思い
至ったのか分からないが、発想は面白い。クライストチャーチからマウントクックに行く街道沿いに
あるから、南島を訪れた人は、マウントクックが悪天候で見られなくても、必ず、この教会を訪問する
ことになる。長く居ても15分で見られる。司祭が入り口横の小さな部屋から出てきて、中国人若者が、
中で馬鹿でかい声を出しているのを苦々しい顔をして見ていた。入場料は無料だが、入って来る人
の99%は、観光客であろう。入り口に寄付箱があるので家内が寄付する。テカポには、この湖と教会
以外これといって見るべきものはない。夕食は、ホテルの近くの奥まったところにあるKohan(湖畔)
レストランという日本食のレストランに入る。サーモン丼など、1200円程度で安くて大変美味しい。
サーモン養殖所から仕入れているとのことである。日本に帰ってその話をしたら、そのサーモンは
冷凍してあるかと聞かれた。生のままだと、胃壁を食い破る寄生虫が体内に入って大変危険だそう
である。数日経っても大丈夫なので多分、大丈夫だとも言われた。そういえば淡水魚は、生で食べる
のは危険だと子供の頃から教わっていたことをすっかり忘れていた。注文する際に確認しておくべき
だった。淡水魚のみならず、イカと鯖も危険だということを、その専門家の先生から教わった。いずれ
にせよ、「湖畔」と言うだけあって、湖の方向がガラス張りになっていて景色が良い。そのうちに、
大きな虹が出て、多くの客がドアを開けて外に写真を撮りにでていたので、自分も最後に出て写真を
撮った。大きくて全貌が1枚に撮れなかった。ニュージーランド西海岸に近いところは、雨が良く降るが、
一般にすぐあがるので、それまでも虹はしばしば見てきた。
案内書を見て、出発前に、日本語による星空ツアーがあることを知って、ネットで申し込んでいた。
実行は天気次第のプログラムのため、代金は予め引き落とされることなく、当日夜9時に電話して
確認せよとのことであった。夕方から、雲がかかり大雨が降り始め、とうてい実行できそうもない。
Earth&Sky社事務所が、ホテルの隣なので、8時に直接断りに行った。予想外に、そこにいる日本人
の事務員が言うには、今、前線が通過中なので、未だ決行するかどうか決めかねているとのことで
ある。もし、決行する場合のみホテルに電話してほしいと言って帰ったら、思いもかけず9時に、西から
晴れてきたので決行するとの電話が来る。出発の10時前にホテルのロビーに行ったら、このホテル
からも、主に日本人の数組が参加することを知った。隣の事務所まで歩いて、代金を払い、ミニバス
に乗る。ミニバス2台で行ったから40人程度の参加者があり、そのうち半分が日本人で、あとの半分
は白人系である。日本人は団体のオプショナルツアーなのであろう。どこで観察するのかと思っていたら、
昼間、走ってみたMt. Johnのある場所から、柵を鍵で開けて、登っていく。先に天文台があって、星の
観察をしている妨害にならないようにと、終点の7−8分前から、車の電気も消して進む。月が明るいの
で、道はよく見える。月が、こんなに大きく明るいとは、初めて経験した。前日が満月だったとのこと
である。1時間半前までは土砂降りだったのが嘘のように雲1つない。望遠鏡が幾つか並ぶ観測点で、
1つの望遠鏡(多分観光専用なのであろう)と、携帯の望遠鏡を使って、星を見せてくれる。日本語と
英語の2班に分かれて、ワーキングホリデーで働いている昔、天文少年だった29歳の人がまず肉眼の
下で説明してくれる。星の知識皆無の私でも、「南十字星」とか、「にせ十字」とか、その他多くの星座の
説明を聞いてなるほどと思う。星の知識が多少はある家内はもっと楽しんで観察している。風もなく、
防寒具を用意して行ったので寒くはなかった。星観ツアーは、2年前の、この時期にハワイのマウナケア
で参加したことがあるが、その時は4000メートル近くで、多少高山病になっていたが、望遠鏡の倍率
が高く、視野が広くて、より見やすかった。今回は、視野が狭いので、見にくく、交代でみているうちに、
視野から消えて、はたして自分の見ている視野内に目的の星は本当にあるのかどうか分り辛いことも
あった。ニュージーランドでは、天候、町から離れているなどの関係で、ここが一番適している場所として
天文観測所が設置されているとのことである(標高1031 m)。世界最南端の天文台だそうである。
説明書で見ると名古屋大学も協力してMOA望遠鏡を設置したとのことである。MOAという意味が分らない
ので、帰ってネットで調べたらMicrolensing Observations in Astrophysicsの略だそうで、そういわれて
もどこがすごいのか素人には分らないが、この項目だと全部ここの観測所(Mt John University
Observatory)の記述ばかりである。こんなにすごいところに素人が文字通り物見遊山で、来てよいもの
かと後で心配になった。一般には、車では入れないが、登山道があると案内書に書いてあるので、
歩いては来られるらしい。三脚を用意して写真まで撮ろうと思ったが、やはり難しく、写せたのは月だけ
であった。代わりに、帰りに星空の絵はがきをくれた。聞き間違いでなければ、この場で撮ったと言って
いた。12時ごろ、ホテルに帰ったら、入り口は閉まって電気も消えている。ホテルのレセプションは、
我々多数がツアーで出て行くのを見ていたので、まさか閉まっているとは思わなかった。他の日本人
参加者も、どうしようかと慌てている。白人の参加者1人が、閉まっているのを見て、ホテルの脇に廻って
中に入って行く。その人に付いて行き入ることが出来た。もし、この人がいなかったらどうなったことか
とひやりとする。サービス業に就いている人でも、外国人は、一般に日本人ほど気が利かないことを
心しておかねばならない。夜、外出する時は、必ず、帰って来た時の入り方を、事前に確認すべきで
ある。他に、多くの同行者がいたので、うっかりこの原則を実行せず、危ない目にあった。

●オークランド 2月16−17日(木―金) 

帰国便は、オークランドからしか出ないとのことで、1日前の11時発の便で、クライストチャーチ
からオークランドに移る。オークランドは、ニュージーランドの人口の約3割(130万人)が住んで
いる首府である。南緯約37度で、日本なら、いわき市あたりに相当するから、クライストチャーチ
より大分暑い。ホテルは、空港の近くに予約していた。タクシーに乗るつもりであったが、乗り合い
タクシーという制度もあると案内書にかいてあるので、空港のHelp(Information とは書いてない)で
行きかたを聞いたら、そこにある専用電話で、2桁の番号を回すと迎えに来てくれるという。電話して
10分ほどで迎えに来てくれる。4kmぐらいで、5分で着く。空港近くの16ケのホテルが、同様の
サービスをすることが、バスの待ち合わせの看板から分る。ニュージーランドに来て初めて
エレベーターのあるホテルである。まだ、日が暮れるには、時間があるので、友人に薦められた
360度見渡せるというマウント・イーデンに行くことにする。ホテルの車で、空港まで送ってもらい、
そこから空港と都心を結ぶ空港バスに乗って麓のビレッジで下ろしてもらい、そこから20分ぐらい
かかる山(標高196 m)に登る。低い山であるが、緑に囲まれた市街や海など見渡せて見事である。
バスで団体が次々と来ている。こんなに低い山でありながら、真ん中にきれいにかなり深い噴火口
ができていて、牛が放牧されている。Eden Garden というのが、麓にあると書いてあるので、
停まっている団体観光客のバスの運転手に道を聞いて見に行く。かなり複雑で、分りにくく、途中、
2ケ所で聞いてたどり着く。3時半に入り、閉館の4時半近くまでいた。入場にはシニア料金が適用
された。ここは、シニアの定義が60歳以上であった。ニュージーランドでシニア料金が適用された
のは、他に、マルイア温泉と南極博物館だけで、後者は65歳以上であった。英国式庭園を予想して
行ったが、山の斜面を利用した植物園で、多くの木や草花が植わっているが、草木の名前ではなく、
寄付者の名前(主として夫婦の名前)のプレートがある。ベンチなどにも寄付者の名前が付いている。
きっと、この町の年配の同好会みたいのものの楽しみの場所にもなっているものと思う。入り口付近
でコーヒーを飲んでいる人はいたが、中では、全く他の人には会わなかった。また、町まで歩いて、
空港バスで帰る。行きは、市街まで行くと思われ$20であったが、帰りは、途中から乗車ということで
$16であった。バスの運転手は携帯で、プライベートと思われる長話をしていた。それほど長閑である。
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写真説明:
24) Mount Cook Salmon Company 養殖所。
25) 善き羊飼いの教会(Church of the Good Shepherd); テカポ湖畔