2. レイキャヴィーク散策

 今日は、事実上のアイスランド観光初日で、1日中、レイキャヴィークの散策をすることを計画していた。宿泊しているホテルは、海岸にほとんど面していて、町の中心からは約2km離れている。まず、町のセンターに行ってバス切符と地図類を購入することに決めていた。朝食後、ホテルを9時過ぎに出る。晴れていて、気持ちがよい。ホテルから3分ぐらいのところに前世紀、最も重要な米ソ首脳会談の行われた迎賓館(ホフジーハウス(Hofdi House))があるので、まず、それを見る。聞いていたとおり、周りからは孤立した、極めて小さな建物である(Re1)。この建物は1909年にフランスの領事館として建てられたそうで、1996年10月12日に米国大統領レーガンとソ連共産党書記長のゴルバチョフが冷戦終結に向けた最初の会談を行った場所であり、現代史上記念すべき場所である。以後、マルタ会談(1998)やベルリンの壁崩壊(1989)に繋がり、ゴルバチョフはその功績で1990年度のノーベル平和賞を受けることになる。建物は、シンプルな構造と色調が、青空と海を背景に映えてすっきりと建っている。中は、公開してはいなかった。そこで10分ぐらいいる間には、団体客が1組、来たくらいであった。
 中心街に入っても、人通りは多くなく、すっきりした感じがする。まず、観光案内所に行き、バスの切符と(10枚で2500 IK = 3302円)、帰国の前に立ち寄るブルーラグーンの入場券付バスの切符(1人 4400 IK = 5613円)をカードで購入する。円の額は後日、引き落とされた額で、換算率は、1 IK = 1.321円あるいは1.322円で、現金の交換率の約1.4円(Ms1)よりかなり有利である。以後、ほとんどカードで支払い、現金を絶対必要とすることは無かった。ブルーラグーンの入場券は、現地に行けば、シニアー(990 IK)として安く購入できるのであろうが、面倒なので、ここで購入する。他に切手と絵はがきを購入する。日本までの絵はがき用の切手代は120 IK=約160 円で、日本からの70 円に比べて2倍以上する。
 次に、車で回る際に絶対必要な地図を買いに本屋に行く。日本にいるうちに、どのくらいの縮尺の地図を購入すべきか、ネットの旅行記や、地図のカタログを見て調べていたが、北部、南部のそれぞれ25万分の1の地図(西部の一部が含まれていないが、その場所は、ほとんど1号線から離れない予定なので必要ないと思ったし、実際必要なかった)と、観光の中心のミーヴァトン地区の10万分の1の地図を購入した。旅行記では40万分の1より縮尺の小さいものを薦めてあったが、この25万分の1の地図は大変役立ち、これを2枚買うのが正解だったと後でも思った。ミーヴァトンの地図は縮尺が半端で、あまり役立たなかった。全額が、4350 IKになり、家内が4000 IK以上は免税になるという表示をそこで見つけたので、店員に確認したら、適用できるとのことで、免税手続きの用紙をくれる。帰国の際、空港で、アイスランド通貨で、何の問題なく返還してくれる。町の本屋で本類を購入して、しかも国内で使って、税金を後で変換してもらった経験は今までにない。
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 レイキャヴィークの町のランドマークともいうべき、ハトムグリームスキルキャ教会(Hallgrimskirkja;キルキャは教会の意;llは「トル」と発音する)に行く。その広場には、北アメリカ大陸を1000年に発見したレイブル・エイリクソン(Leifur Eriksson;通称名レイフ・ザ・ラッキー)の像がある(Re2)。彼が、1000年にアメリカ大陸を発見したことは、1960年に、カナダのニューファウンドランドのランス・オ・メドー(L’Anse aux Meadow;現在は世界遺産)で、ヴァイキングが住んだ跡が発掘されて証明されている。自分が、小・中学生の時代は、これ以前だったので、アメリカ大陸はコロンブスが1492年に発見したと教わっていたが、500年前に、ヨーロッパ人に発見されていたことになる。今の歴史の教科書の記述ではどうなっているのであろうか。この像は1930年に、アイスランド建国1000年を祝ってアメリカ合衆国から贈られたから、アメリカも認めている。
教会の丁度、北側を壁の塗り替えか何かで工事用の足場が組まれていて、エレベーター(1人350 IK)で上に登っても(高さは70 m)、海岸と13人のサンタクースが住むエーシャ山(Esja;918 m)方向は展望ができず、ちょっと残念であった。工事中で、この外観ははっきりしないが、柱状になっていて、これは、この国に多い、玄武岩の柱状節理を模したものだそうである。西側(Re3)や北側(Re4)の眺望は、屋根が色彩に富んでいて美しい。
町の中心の道路は、冬季の雪を融かすための湯のパイプの埋設工事(あるいは交換工事)をしているところがあった。
ダウンタウンの中心の広場ライキャルトルグ(Lakjartorg)に面して、首相の執務室があり、その前には、左右に、最初の首相(Hannes Hafstein)とアイスランドに自治権を与えたデンマーク王(KristjanIX)の像がある(Re5)。この建物は、1761-1777年ごろ建ったもので、このレイキャヴィークでは最も古い建物の1つで、以前は、監獄や、大統領の執務室として使われていた。日本の村役場みたいな感じで、その長閑さに驚く。後日、日本のテレビでレイキャヴィークの町を紹介していたが、大統領官邸も、入り口に警官も立っていなかった。
チョルトニン湖(Tjornin)に面した市庁舎(Re6)の中には、アイスランドの立体地図模型があり、食堂から、湖を見るのがお奨めとネットにあったので、ここで昼食を取る予定で行く。地図の模型はそう参考になるほどのものでなかったし、食堂もやや薄暗く湖の眺めも外からの方がよかったが、予定通り、軽い昼食を取る。食堂は空いていた。
そこから、アイスランド大学(Haskoli(=High School)というらしい)のキャンパスまで歩いて行く。飛行機で一緒だった日本人の人たちが、アイスランド大学で開かれる学会に出席すると言っていたので、どういう所で開かれるのか興味があったが、ちょっと歩いた限り学会の看板は見当たらなかった。理工系の学科の表示もあったが、人影は見当たらなかったから、大学でも、この国では、教員・職員も夏休みは、原則として休むらしい。
国内空港の側を横切って特徴的なドーム状の屋根を持ったペルトラン(Perlan;給湯塔)を見に行く。途中の野原には、ルピナスの花などが美しい。その近くに明後日借りる車のHertzの事務所があるので、自分だけそこに立ち寄って、ネットで得ていた予約書を提示して、必要なことを告げてくる(自分のホテル名を告げて、時間までに迎えにきてもらいたいことなど)。
ペルトランに行ったら、話に聞いていた人工ゲイシール(間欠泉)が見える。7-8分ごとに間欠泉を吹き上げているが、予想していたより迫力がある(Re7)。夕方17時までと書いてあったが、16時を最後に30分経っても吹き上がらなかったので、それを確認して帰ることにする。ペルトランの上階は回転食堂になっているが、回転はしていなかった。バスで、ホテルに帰るべく、近くのバス停留所で待つ。時刻表だと30分毎になっていたが、時刻どおりバスが来て、1回乗り換えて(バスの券は運転手に言えば、1枚で済む)ホテルに帰る。
町の沖合いのヴィズエイ(Videy;エイは島)に、昨年、ヨーコ・オノがイマジンピースタワーを建てたことが、日本のテレビでも紹介されていたので、見に行こうと思って、船の時刻表が出港する場所などを予めネットで調べていた。最終の船の出港時間が19時15分で、まだ時間があるので、ホテルでしばらく休んで、18時20分頃出ていく。ホテルのフロントで出港場所を確認したが、フロントの人は、知らないで、町の中心に近い港を教えてくれ、最近変わったのかもしれない。近くまでバスがあるのかもしれないが、徒歩の方が確実なので、30分近く歩いて、18時50分に港(Skarfabakki)に着く。港には聞く人もいないので、ちょっと心配になったが、やがて、参加者と思われる人が車で集まってくる。そのうちに、切符売りの親子が来て、切符を買う(大人:800 IK、シニアー:600 IK)。
後で、船の出る場所の写真を見て分かったが、左端近くに見える小さな白いものが、このイマジンピースタワーである(Re8)。19時15分発の船は、10分もかからず、島に渡り、そこで、水のペットボトルが支給される。参加者は15人ほどであったが、我々以外はアイスランド人らしく、説明はアイスランド語のものであった。このツアー参加者は、タワーの見学に来たものと思っていたが、案内人は、そのタワーの横を通り過ぎていくので驚く。このツアーは、この島の自然(岩、草花、鳥など)を説明することを目的とするものであるらしいことを知る。このままでは、目当てのタワーに立ち寄りそうもないので、我々2人は、次の説明地点から戻って、そのタワーの周りで写真を撮る。白い多角形の面には、いろいろな言葉で、“Imagine Peace”に相当する語が書いてあり、日本語では、「平和な世界を想像してごらん」とあった。塔の周りの地面には、光線を出す穴があり、ある時期(10月9日―12月8日、大晦日)には、光が上方に放たれ、レイキャヴィークの町から見えるようになっている。もちろん、白夜の現在は光は出さない。
ツアーは予定の時間を1時間も越えて、21時40分に島を離れる。船着場から、ホテルまで歩きかけたら、参加者の1人の女性の車がわざわざ我々を待っていてくれ、ホテルまで送ってくれた。ツアーの案内人は1時間以上も越えて案内してくれ、また、ツアーの同伴者は、ホテルまで車で送ってくれるなど、この国の人は、本当に親切であることを、初日から感じる。
写真説明
Re1 ホプジーハウス;遠方はエーシャ山
Ms1 交換レート(2008.7.3早朝)
Re2 ハトムグリームスキャルキャ教会とレイブル・エイリークソン像
Re3 教会展望台より町の北方を望む;ドームはペルトラン(給湯塔)
Re4 教会展望台より町の西方を望む;手前はチョルトニン湖
Re5 首相執務室
Re6 チョルトニン湖と市庁舎
Re7 ペルトランの(人造)間欠泉
Re8 イマジンピースタワー(左端の白い点)のあるヴィーズエイへの船
Re9 イマジンピースタワー;多種の言語で、Imagine Peaceと書いてある