タスマニア島(Tasmania) 大陸南の自然溢れる島
●計画
ドライヴするのに適度の大きさで、自然の宝庫である。この島の三大魅力地点として、クレイドル・マウンテン、ワイングラス・ベイ、ラべンダー農園であると考えた。逆に言えば、これらの見るべきところがあるので、タスマニア島を選んだ。そして、ラべンダーの見ごろは1月末までというので、非常勤講師などの授業が終わる直後の1月下旬の出発となった。
計画立案に際しては、この島を車で回られた方の旅行記は大変良く書かれていて
http://home.t05.itscom.net/yamagami/tasmania/2004tasmania0.html)、参考にさせていただいた。
旅行した場所を地図上に示す(T1)。

メルボルン(Melbourne)乗り継ぎ
1月25日(木)車を成田の民間駐車場に預けて、夜、成田をカンタス航空で20時10分に出て、メルボルン空港に翌朝26日に着く。ここで国内線に乗り換えるので、荷物はここで一旦降ろして、入国に際してのX線荷物検査がある。予め、申告書を提出するのだが、妻は、飴ぐらいはよいだろうと思って持参したら、引っかかり、かばんを開けさせられる。運良く、画面検査している人と、かばんを開けた人との連絡が悪く、2つあった手提げかばんの入っていない方を開けさせられて、通してくれた。飴がどうしてX線で分かるのかは分からないが、見つかった罰金を取られたのかも知れない。農業国として成り立っている国なので、生態系を壊す恐れのあるものの侵入に大変厳しいようだ。行き先(タスマニア、シドニー、パース)の地図を購入する。タスマニアは62万5千分の1、それ以外の2つは11万5千分の1で、小さすぎたり、旅行領域をカバーし切れなかったり、これだけでは、ドライブには不十分であるが、それ以上はここでは購入できない。4時間の乗り継ぎ時間は、国内空港に移動したり、換金したり、買い物をしたりしたので、結構時間を要したので長すぎたことはなかった。到着フロアーのATMは、Citibankのカードがうまく受け付けられず、出発フロアーに行ってようやく受け付ける機械に行き当たる。レートは、後に送られてきた清算書で見たら、1月26日は、1Aus$=98.51円であり、成田で見たレートの、1Aus$=103.83円よりは、大分有利であるが、つい最近までは、91円ぐらいであったので、急速な円安を実感する。以下$の表示は、全てオーストラリアドルのことで、1$ ? 100円であるから値段は、日本人には分かりやすい。
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ホバート:Hobart(およびソレル:Sorell) (人口19万人の、タスマニア島の首都)

カンタス航空と提携しているジェットスター航空で、メルボルンを12時40分に出て、タスマニア島の首府ホバートの空港に、13時50分に着く。日本より東に位置するので、当地は2時間、時間が先行している。ジェットスター航空は徹底した合理化で、航空運賃を安くしている航空会社の1つとして有名であり、軽食も有料であり、冷えるので、ひざ掛けを要求したら、持ってないと言われた。空港では、今度は可愛い犬が待ち構えていて、預けた荷物や、手荷物かぎ回っている(A1)。麻薬でも検査しているのかと思ったら、後に、これも食物を探しているらしいことが分かった。しかし、ここの犬は、能力が劣っていたのか、我々の飴も含めて、誰もひっかかる人はいなかったように見えた。同じ国の間でも、食物の移動は禁止されているらしいことを後になって知る。
タスマニア島は面積68 332 km2、人口 約48万5千人、緯度は、南緯42°50′(Hobart)で、北海道とよく比較されるが(面積78 417 km2, 人口 約563万人、緯度は、北緯42°59′(札幌))、人口密度は北海道の約10分の1である。1642年に、オランダ人探検家アベル・タスマン(Abel Tasman)がこのタスマニア島を発見し、ヴァン・ディーメンズ・ランド( Van Diemen's Land)と命名し、そして、オーストラリア大陸は、その前にポルトガル人が、上陸したが、あまり大した資源もないと思い感心を示さなかったので、結局、大陸を含めて流刑地として利用し始めたイギリスの領土となった。タスマンの名前に因んで、タスマニアという現在の名前が付けられた。
空港で、協和海外旅行社の野口さんを通じて予約してもらったAVISの車を借りる。車は、ヒュンダイ(韓国通の妻に聞いて韓国車であることを知る)のオートマ車であった。以後、4ケ所いずれもヒュンダイ社のものであったが、日本の車と比べて、全く遜色がなかった。
ホバートよりも、空港に近い町、ソレルのB&B(Sorell Barracks;1泊2人で、Aus$130)に往きと帰り、それぞれ、1泊ずつ予約していた。そこに行く途中、空港から直ぐの所に、期待していたカキ養殖所バリラベイオイスターファーム(Barilla Bay Oyster Farm)があるので、そこで、新鮮な生ガキを食べる 。ソレルはT字路に信号が1つしかない小さな町で、B&Bは、すぐ見つかる(T2)。5室ぐらいの小さなもので、オーナーは近くに住んでいるらしく、客は、指定の番号に電話せよと電話ボックスに書いてあるので、電話したが不在なので、メモを残して、ポートアーサー流刑場跡を見に行く。
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ポートアーサー(Port Arthur)(歴史史跡)

この日、1月26日は、オーストラリアデーといい、建国記念日の休日であり、訪問するには絶好の日である。1788年1月26日に初代総督アーサー・フィリップが、イギリスから流刑囚778名、海兵隊とその家族約700名(彼らは皆、貧民層であったそうである)を連れて、シドニーのジャクソン港に到着し入植が始まったので、つまり、それ以前に、ポルトガル人(1521年)やオランダ人(1661年)が来ていたが、香辛料や黄金もないので見捨てていたのを、イギリス人が流刑地として活用し始めた日で、他の国とは大分異なった意味の建国記念日である。私はオーストラリア人の友達もいないし、いたとしても、彼らの祖先についてどう感じているかなど聞けるわけにもいかない。この日を彼らがどう祝うのか流刑場跡に行ってみれば、それが分かるのではないか、興味があった。しかし、この流刑場跡でも、町でも、何か特別のことをすることは、全く見られなかったし、webで調べても、たいした行事は行われないようであった。そして、この国は、この日も、旅行中を通じても、国旗をほとんど見なかった。そういえば、メルボルン(Melbourne)の国際空港を出たところで、女の子が2,3人小さな旗を持って立っていて、売りつけているものとばかり思っていたが、もしかしたら、オーストラリアデーで希望者にくれていたのかもしれない。外国を旅行していると、国旗をあちこちで見る国とそうでない国があって、独裁国は別として、一般民衆の自国への正直な歴史認識や愛国心が見えて面白い。それにしても、何故この日を祝日としているのかも不思議である。ポートアーサーは、囚人の中でも、更にこの地で罪を犯した「囚人中の囚人」が連れてこられたとのことである。
 ソレルのB&Bを15時45分に出て、ポートアーサーには16時45分に着き(68km)、約2時間、刑場跡(Port Arthur Historic Sight;入場料1人$12)を見て回る(T3)。因人は勿論、監督者も、冬は寒くて大変だったろうと思う。中で、発掘しているところもあった。刑場は、この国の歴史上重要な場所なのであろう。夜にはゴーストツアーも行われているらしい。昼でも、観光客のまばらな、閑散とした地で、ゴーストツアーに参加する気にはなれないし、大体、参加者がいるのであろうかと思う。
後でweb(ウィキペディアなど)で知って大変驚いたが、この地で、約10年前の1996年4月28日から、2日間で、マーチイン・プライアントという男が35人を射殺するポートアーサー事件があり、これは世界の犯罪史上2番目に殺人数の多い事件だそうであるが(因みに、一番は、韓国で、禹 範坤(ウ・ボングン)が、1982年4月26日から翌日にかけて、57人を殺害、35人に重軽傷を負わせた事件だそうである)、死刑制度のないこの国では、現在も服役中であり、精神異常でもなく、動機はよく解明されていないそうである。また、犯人は別人だという説もある。これを契機に銃の保持の規制が少し厳しくなったようであるが、州によっても規則が違い、この州では、まだ簡単な手続きで手に入れられるそうである。一般に治安が大変良いので、アメリカほど問題ではないが、毎年、銃による事件があり、死んでいるそうである。このように、ポートアーサーは呪われた町ではあるが、何も知らずに歩いていれば、この季節は、静かで美しい景色の場所であった。むしろ、知らなくてよかった。知っていたら、今回、あちこち、ほとんど無人の地帯を安心してドライブできたであろうか。
夕方、ソレルのB&Bに帰ってきたら、鍵とメッセージが、入り口の電話ボックスの中に置いてあり、電話をしたら、オーナーの息子とその彼女(?)が5分ぐらいで車で現れ、いろいろ説明してくれた。B&Bといっても、朝食は、自分の部屋に用意されていて、オーナーが出してくれるわけではないので、明朝、鍵はどうやって返すのかと聞いたら、流し台の上に置いておいてくれれば、部屋の鍵はかけずに勝手に出て行ってよいとのことであった。この島には、泥棒はいないとのことであった。夕食を食べる所を聞いたら、5分ぐらいで歩いていける近くのPembroke Hotelのレストランを教えてくれた。この時間、この町で開いている唯一のレストランらしかった。このB&Bは5室のうち、2室か3室しか泊まっておらず、庭には、杏がたわわになっていて、勝手に取って食べられ、極めて閑静なところであった。翌朝の食事も、予め台所に用意されていて、勝手に取れるのは有難い。なお、webで出発直前に得たこの日のホバートの天気予報では、晴れ、最高気温24 ℃、最低気温8 ℃となっていた。
翌日27日は土曜であり、ホバートで、土曜の午前に、サマランカ広場(Samalanca place)で開かれる朝市が、名物だと調べて知っていたので、良い機会なので立ち寄ることにする。B&Bを8時10分に出て、途中3回、海や川を渡り、35分間で、道を間違えずに着けた(26km)。ホバートは、人口が19万人もあるので、近くに駐車ができるか心配であったが、簡単に駐車できた。駐車料は1時間で$2で、1時間弱見物した。結構多くの店が出ていて、人もかなり来ていて、おもしろかった(T4)。人々の服装から、寒いことが分かる。この国は、スピード違反と駐車には大変厳しいと予め甥から聞いていたので、以後、駐車時間は、1分でも超過しないように注意した。
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ビシェノ(Bicheno)(ワイングラス湾とペンギンツアーの拠点地)

 ホバートから始まってホバートに戻るには、島を右回りするか東回りする2つの方法がある。webでのホテル予約の失敗で、妙な周り方をすることになったが、当初は、左回りを予定したが、右回りの方がよいことが、後で分かった。何故なら、西海岸は、天気の悪い日が多いのに対し、東海岸は、天気がよい日が多いので(ビシェノの年間雨量は、わずかに約70 mm)、後で、よい思いをする方がよいだろうからである。その他に団体旅行の行程を見ると、フェリーで、北のデボンポート(Devonport)に来て、ホバートから出る縦断方式もあるようであるが、これだと、この島の一番の名所のクレイドル(Cradle)山の見物が、難しい気がする。同じ島でも東と西で雨量が大変違うのは、ハワイ島、ニュージーランド、冬の日本列島でも経験することである。
 ホバートを出て、泊まったソレルを再度通ってビシェノに向かってA3を北上する。ソレルからビシェノまでは、約150 km、1時間50分の行程と記されている。途中、スワンシー(Swansea)近くのケイツベリーファーム(Kate’s Berry Farm)に立ち寄ってブルーベリーアイスクリームを注文したら、コーンの上20 cmは出ているものが出され 美味である($5.50)。
ビシェノのモテルにチェックインして、すぐフレシネ(Freycinet)半島にあるワイングラスベイ(Wineglass Bay)を見に行く。入り口のところで、国立公園入園料を払い、更に先の駐車場まで行く。入園料を払う場所は、ゲートがあるわけではなく、何となく気付いて、ちょっと入り込んだところにある事務所に払いに行く。駐車場は、車が3台ぐらいしか止まっておらず、野性のワラビーが草を食べている。珍しいので、近づいて沢山写真を撮ったが、これは、今後あちこちで見ることになり、少しも珍しくないことを知る。ワラビーについては、よく知らなかったので、後で、ウイキペディアで調べたら、「ワラビー とは、特に明確な定義付けはなされていないものの、フクロネズミ目(有袋類)カンガルー科に属する動物のうち、小型のものを指す。カンガルーに比べ、後ろ足が小さく尾が短い。しかし、後ろ足で跳躍し移動すること、育児嚢(いくじのう)で子どもを育てることなど、基本的な習性はカンガルーと同じである。」とある。明確な定義がなく、カンガルーに似ているが、カンガルーでもないらしい。この最初に見た時は、カンガルーの子供とばかり思った。
ワイングラスベイに行くには、そこから山を越えて行かねばならないが、頂上あたりに、見晴台があり、そこまでは20分ぐらいで行ける。そこから下にワイングラスベイが見える (T5) 。白い、砂浜が、きれいに縁取りをした円弧を形成し、ワイングラスの縁のようで、うまく命名したものと思う。ここから、下に降りて近くまで行くと、意外に奇麗でなく、帰りの登りが大変だということを、他の人の旅行記で読んでいたので、最初から、近くまで見に行く予定はなかった。望遠鏡で見ると、確かに砂浜はそう奇麗ではなさそうである。20-30分ほど、ゆっくりと景色を楽しむ。その間、展望台に来たのは、日本人を含めて、2組だけであった。車まで戻って、この国立公園内の別の所を見て回る。ワイングラスベイほど独特な景色ではないが、海岸の岩のところどころが、色を塗ったように赤い。多分酸化鉄(III)の色であろう。ハネムーンベイ(Honeymoon Bay)という名前だそうであるが、新婚カプルはおろか誰もいない(T6)。
 モテルに19時40分に戻って、夕食後、夜には、ペンギンツアーに参加する。主催している会社は3社ぐらいあるが、特に理由はなく、“Bicheno Penguin Tours” を選び、東京出発前にwebで申し込んでいた。案内では、参加1週間前までに申し込めと書いてあるが、27日のツアーのものを23日に申し込んだら、クレジットカード引き落しで24日にwebで切符が送られてきた。1人$20で、21時15分にホテルに迎えに来ると書いてあったので、十分厚着をしてロビーで待つ。同じホテルから、他に3組ぐらい参加する。2,3の他のホテルでもピックアップして、総勢十名程度であった。バスで10分ぐらいの場所に着く。そこには、案内人が待っていて、フラッシュを焚いてはいけないなどの簡単な注意の後、柵を開けて海岸の方に100 m弱歩く。私有地になっていて、個人で勝手に見られない仕組みになっている。そうでなければ、ペンギンにとっても安全でないから、主催者・ペンギンの両方の”利“にかなった当たり前なことだと納得する。案内人の懐中電灯を指すところに1匹、2匹と見える。残念ながら、期待していたような、群をなして海から陸に上がってくるのを見るには、遅すぎる。リトルペンギンという種類だけあって小さく、背丈は20 cm程度であろう(A2)。更に一段低くなった海岸寄りには、すでに沢山いる。上側まで上がってくるのと、そこに留まっているのとは、警戒心の違いなのであろう。足元まで近づいたものを見ていると、お互い喧嘩している。野生のペンギンを見るのは初めてで、平和な動物だと思っていたが、そうでもないらしい。自分の靴の上を乗り越えていったペンギンもいて、人に踏みつけられないのかと心配する。この体で昼の間は、1日中海に出て、厳しい毎日を送っているのかとそのタフさに感心する。案内人のライトだけが頼りに写真を沢山撮るが、ライトをすぐ動かすので、撮った写真は、手ぶれしたものばかりであった。所々に、人間が作った横に小さな孔のあいた箱があるが、案内人が蓋を開けてみた5-6個のいずれにも、まだ入っていなかった。他の、ツアーと思われる2組が来ていたので、見学する場所は同じであることを知る。見学は往き返りを含めて1時間であった。
 モテルに帰った後に、妻が気分が悪くなる。翌朝になっても具合が悪いので、急遽、妻だけが、ここに、3泊残り休養することにし、先々のホテルは、予約して、料金も払ってあるので、自分だけ旅を続けて、帰り際に、ここに戻ることにする。レセプションに事情を話したら、運良く、同じ部屋で3泊できるとのことで、料金を払う。もし、病気が悪化したら、医者に行けるように、電子辞書を置いていく。

クイーンズタウン(Queenstown)(クレイドル・マウンテンへの拠点地)

 島の東海岸から、約340 km離れた西海岸のクイーズタウンに行くことになったのは、webで予約の際の間違いから起こった。ロンセストンのホテルと思って予約したのが、実際は、間違ってクイーンズタウンのホテルを予約して、このホテルは、一旦予約したら、キャンセルしても料金が戻らないシステムになっていたので、こういうことになった。
朝は、モテルで上記のことを頼むなどしたが、8時20分に出発することができた。今日は、ナビゲーター無しで長距離行かねばならないが、webでコースを調べていた。オーストラリア内の車の移動に大変役立つ。
www.nowwhereroute.com/travelmate/mapmaker/mappage.aspx?
途中、良い道ながら、舗装してない道があり、たまたま止まっていた車の人に道を確認した。途中、風が非常に強くなり、車のドアを開けて外に出るのも困難になったので、時々止まっても、外にでることはあまりなかった。昼食後、13時40分にセントクレア (St Clair) 湖に立ち寄る(セントクレア国立公園入園料$20)。湖面は波立って、厳しい姿を見せていて、人影はない。ここは、クレイドル山の南側に位置し、オーストラリアで最も深い(167 m)淡水湖で、氷河の侵食でできている(T7)。タスマニア原生地域は、全島の20%を占める世界複合遺産(1989年)で、どこが境界かはっきり分からないが、このセントクレア湖や、翌日訪問するクレイドル山は正しくその中心に位置している。しばらく、見て、旅を続ける。15時50分に、ネルソン滝に着き、15分ほど見に行くが(T8)、あちこちの滝を見てきた目には、特に感動は無かった。クイーンズタウンに着く前に、峠から、町が下に見える (T9) 。ホテル(Silver Hills Motel)に17時10分に着く。トリップメーターは346 kmを示していて、webで調べていたものとほぼ一致した。まだ、日の入りには十分時間があったが、そのままホテルで休養する。ホテルのマスターにビシェノで休養中の妻に電話したいといったら、自分の携帯でかけてくれた。一度日本を中継しての通話なので、高額になったと思うが、親切にも料金を取らなかった。妻は、悪化していないようで、ほっとする。今日は、山道といっても道は悪くない道を、ほとんど、車にも出会わず、自然の雰囲気を味わいながら、強風の中をひたすら走ったという感じである。この町から西海岸にかけていくつかの面白そうな観光地があるが、ホテル予約を間違え、そのためコース選択が最適でなく時間が無くて訪問できなくなったのは残念である。
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クレイドル山(Cradle Mountain)
 1月29日は、世界遺産で、タスマニア観光のハイライトの1つクレイドル山麓のダブ湖(Dove Lake)の周遊を目指す。朝8時半前にクイーズタウンのホテルを出発し、途中、ところどころで、写真を撮るために休みながら、11時過ぎに、入り口のクレイドル・インフォメーションセンターに着く。ここで入場券$10を購入し、10分ごとに出ている無料シャトルバスに乗り、約9 km先のダブ湖畔まで行く。最終のダブ湖駐車場の大きさが小さく、このセンターの地点で、空きの数が電光表示されているが、すでに満車になっていたし、途中の道は、道幅が狭く、車の入れ違いに苦労するので、この入り口で、車を置いてよかった。約20分かかり、バスの乗客は6-7人であった。昼のピーク時でも、行く人は、1時間に50人以下ということになる。
 終点でバスを降りると、そこは、ダブ湖の湖畔で、正面に、クレイドル山が見える。2つの峰が見えるが、正確にいえば、右側の一番高いのがクレイドル山(1545 m)で、左側はリトルホーン(Little Horn)(1355 m)でこの2つの峰とその間の稜線がゆりかごのように見えるのでこの山の名称が生まれた(T10)。この湖を1周(6 km)するのに、約2時間かかり、その風景が、タスマニア島随一であるとの評判で、ここを歩くことを予定してきた。雲も多かったが、山は晴れていて、最初に、正面に見た時、期待に背かない風景と感じる。ダブ湖を時計回りに回るのと反時計回りと2つの方法があるが、特に理由なく、右から、反時計回りに回る。ハイキング道は、全コースほぼ平坦で、よく整備されている。途中、ちょっと横にそれて小高い所から眺める場所や、水辺に出る場所などがあり、それらのところに立ち寄り、また写真を撮りながら、十分時間をかけて歩く。対面から歩いてくる人にも10分に1度ぐらいしか会わない。クレイドル山に近づくにつれて、その険しい山肌がはっきり見えてくる。景色としては、やや遠くから、湖の後方に見える方が美しい。湖の最先端を回って、駐車場に戻る道を歩いていたら、前方に、なにやら見たことのない動物が、ゆっくり歩いている。危険な動物かも知れないが、そういう動物が出るなら、あちこちに注意書きがあるはずなので、そうではないと推測する。その歩き振りをみていても、獰猛な動物とは思えない。後ろから、何枚か写真を撮りながら、20 mぐらい追尾する(A3)。顔も見たいので、そっと横を通って前へ出ようとしたら、流石に、横の藪の中に入っていってしまい、正面からの写真を撮れなかった。しばらく行って、向かいから来る人に、動物の形状を述べて名前を聞いたら、ウォンバット(Wombat)だと教えてくれる。名前は聞いてはいたが、よく調べていなかったので、分からなかった。後で調べて、体重30-40 kgで、穏やかな動物で、昼間は穴にこもり、夜になって草木やきのこなどを食べることを知る。昼間に出ていたところを見ると、彼らにとって、人間を含めて昼間でも安全な環境と感じているのだろう。更に行くと、大きなからすに似ているが尾に白い部分のある鳥が棒の先端に止まっていて近づいても逃げなかった(A4)。ダヴ湖は、ボートも浮かんでもおらず、自然のままのたたずまいを見せている。最盛期でもこの静けさであるから、季節外れに来たら、寂すぎるところであろう。帰りは2時30分初のバスに乗ったので、結局、2時間のコースのところを3時間ゆっくり楽しんだことになる。帰るころには、右側の峰の先端は、次々と西側から来る雲に覆われていたので、頂上は、大変厳しい気象状況であることが分かる。しみじみとした景色を堪能できた。気温は、見てないから、分からないが、ヤッケを着て、小さなリュックサックを背負っていて丁度よかったから20 ℃以下であったと思う。
今回取ったコース以外にも、インフォメーションセンターから3時間のコースで、北側にあるクレーター湖に行くコースもある。自分は、この後にエアーズロックの登山があるので、タスマニア島ではあまり体力を消耗しないように、この登りのあるコースは取らなかったが、ここも、更に人が少なく、素晴らしそうなコースである。
 ロンセストン(Launceston)のモテル(Elphin Villas)に着いたのは、18時45分であった。クイーンズタウンのモテルを出てから、285 km, クレイドル山のインフォメーションセンターを出てから、170 kmを記録していた。部屋に入ったら、鳥が1匹紛れ込んで入っている。昼間の掃除の際に入ったのだろう。時間が経って、困っていたはずだが、割合落ち着いているし、人間を怖がる様子もない。こういう経験は初めてなので、慌てて写真を撮ったので、焦点が合っていない(A5)。すぐ、戸を開けて逃がしてやる。モテルで、パターソン(Paterson)通りのシーフードレストランを、紹介してもらって、車で行ってみたら、看板は、残っていたが、もう店じまいしていた。しかたがないので、同じ通りにあった別のレストラン(Cataract Bistro)で、アルコール抜きで食事をして、また車でモテルに帰った。
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ラべンダー農園と洞窟など
ロンセンストンは、タスマニア島では、ホバートに次ぐ第2の都市で、人口9万人を有する。近郊の観光地を訪問するために、ここのモテルでは2泊することにしていたが、中でもラベンダー農園が、一番魅力的であった。今まで、ラベンダーで有名な、プロバンスや、グラース等行ったことはあるが、見渡す限りのラベンダー畑は未だ見たことがない。案内書で見たら、12月初めから1月末まで、中でガイドツアーがあるというので、盛りのほとんど最後の1月30日に訪問することにする。ロンセストンのモテルを9時10分に出て、1時間15分で、55 km離れたナボウラ(Nabowla)のラベンダー農園に着く。農園を眺めたり、みやげ物店で買い物をしたり、ラベンダー入りアイスクリームを食べたり、見学ツアーに参加したり、1時間半近くいた。もう盛りの季節が過ぎていて、畑から溢れるような香はしなくなっており、また、ツアーといっても、客がもう1組しかおらず、参加料も必要とせず、蒸留部屋を10分ぐらい説明するだけの簡単なものであった。本当のツアーはきっと畑も回って見せるものなのであろう。代わりに、自分の車で、勝手に、隅から隅まで走ってみたが(T11)、トラクターで農作業をしている人から、注意もされなかった。盛りは若干過ぎてはいたが、これほど大きなラベンダー畑を見ていなかったので、よい気持ちで後にする。
ここへ来る途中に、ブルーベリー農園という看板があったので、帰りに寄ってみる。ラベンダー農園から21 kmの距離を示していた。店は、カフェも兼ねていて、数組が入っていたが、ブルーベリーに興味があるので、自分で採れるのか聞いたら、自分で採る場合は、最低1 kg採らねばいけないといわれる。ポリバケツを渡してくれて、採ってよい場所の畝番号を教えてくれる。後方に広がる畑に出たら、他の客は1−2組程度で、広々とした畑で、2 mほどの木に鈴なりになっている(T12)。昔スウェーデンに2年間強留学していたので、ブルーベリーは、馴染み深いが、スウェーデンのものは、地面を這うように生えていて、ここのものは、木に生っているので種類が違い、実自体も、大分大粒で、味もよい。農園の雰囲気を1時間近く楽しみながら摘み、計量したら、1 kmをわずかに超える程度であった(T13)。重量に応じた支払いをして後にする。
次に、前日、前を通りながら、時間が遅く見られなかった場所に行くことにする。クリスマス・ヒルズ・ラズベリーファーム(Christmas Hills Raspberry Farm)という名前に引かれて、まずそこに行ってみる。大きな喫茶店になっていて、客がいっぱい入っていて、ショーウインドには、ラズベリーが、プラスチックの入れ物に入れて販売されている。店員は忙しそうにしているので、何も聞かずに外に出て、その辺を歩いてみたが、関係者以外立ち入り禁止のある門はあっても、何かベリーの生っている雰囲気はない。駐車場に戻って、店から出てきた客に、ベリーの農場はどこにあるのか聞いたが、自分もここに時々来るが、農場には行ったことがないからどこにあるのか、知らないという。オーストラリアの「○○ファーム」というのは、実際に生育しているのを見せながら同時に販売する形式のところと、何も見せず、カフェやレストランだけ経営している形式のあるところがあることを知る。それでいて、客のよく入っているのは、むしろファームを、見せない所であるのは、日本人の感覚からすれば名称詐欺のような気がして不思議である。残念ながら、わざわざ行ったのに、このファームでは、何も収穫が無かった。
次に、クレイドル山方向に大分戻ったモール・クリーク(Mole Creek)にある洞窟、マラクーパケーブ(Maracoopa Cave)を見に行く。前日通ったのに、どの辺にあったか分からず迷って、切符売り場に着いたのは、最終ガイドツアーのある16時の10分前であった。洞窟の入り口は、500 m先だというので、森の中の道を走って行ったら、1組の夫婦とガイドが待っていた。よく見たら、そこまで車道がついていたので、車で行くべきだったが、切符売り場で何も教えてくれないので、走って行ったが待たせてしまった。入場料は、案内書に$13と書いてあるが、老年割引があったような気がする。客は3人しかおらず、申し訳なく思う。ここの洞窟の有難いことは、1部を除いて、フラッシュ撮影が自由なことである。今まで、ヨーロッパとニュージーランドの洞窟を10ケ所以上訪問しているがフラッシュ撮影までできるところは少ない。温度は年間通して、9 ℃とのことである。鍾乳石が大変細く長いのが特徴的で美しい(T14)。また、フラッシュの禁止されている所には、ツチボタルがいて、そこの部屋の薄暗い電気を消して真っ暗にしたら、星空のように、大きな洞窟の天井いっぱいにツチボタルが光っているのが見渡せた。前年、ニュージーランドのテアナウで見たものよりむしろ見事であった。テアナウは、船で片道50分ぐらいかけて行かねばならないが、有名なので、観光客は、ここの100倍近くも来ている。ツチボタル以外に、ここで見つかった蜘蛛も2匹壁にへばりついているのを見ることができた。長さ10 cm弱の、黒い針のように細い針金でできたような体をしているが、食料不足のためのエネルギー節約のためか、全く動かない。この洞窟には蝙蝠もいないとのことである。結局約1時間の案内をしてもらう。近くに、やや規模が小さいキングソロモンケーブ(King Solomon Cave)があるが、時間がなくいけない。また、近くに、建物に絵が描かれている壁画の町シェフィールド(Sheffield)がるが、ここにも行けなかったのは残念であった。17時15分にそこを出て、ロンセストン方向に少し戻ったところにある、前日も立ち寄ったトロワナ(Trowunna)・ワイルドライフパークに行く。前日は、夜8時まで開園していると言っていたが、本日は19時閉園とのことである。そう大きくなく、種類も少ないが、コアラ、タスマニアンデビル、カンガルーなどの、当地の名物の動物を揃えている。入園しているのは自分1人だけという贅沢さである。入ったら、いきなり、多くのカンガルーが放し飼いになっている(A6)。柵の無い所で対面するのは初めてで、どのくらいまで近づくのが迷惑でないのか、こちらが危険でないのか分からないので、3 mぐらいまでにして、写真を撮る。次に、タスマニアンデビルを初めて見る。高いネットフェンスで囲まれているところに、しかも遠方で常に動いているので、ネットが画像に入らないように写すのに苦労する。後に別のところでは、低い柵で囲まれたところにいるので、写真が楽に撮れた(A7)。凶暴なものと、そうでないものがいるので、檻もそれに応じて違えているのであろうか。見掛けと名前は怖そうであるが、性格は大人しいといわれている。コアラも檻に入っているのと、人間の腹の高さぐらいの囲いの中の木に止まっているのとがある(A8)。檻に入っているのは、同じ場所を行ったり来たりしているのに対し、木に止まっているのは、寝ているものも、起きているものもほとんど動かない。他に、水鳥を集めている池が見えたが、特に珍しいものもいないようなので、行かなかった。19時に出て、19時45分ごろにモテルに帰り、近くのホテル(Comfort Inn)で食事する。あまり長距離走行した気はしないが、今日は307 km走っていた。
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カタラクト渓谷(Cataract Gorge)

1月31日は、ロンセストンの町の外れにあるカタラクト渓谷を見に行く。渓谷近くの駐車場で2時間駐車する券を購入する。渓谷を渡るチェアリフトは名物(支柱間距離が308 mで、世界一長いそうである。往復$10)なので乗ってみる。下の芝生の中にプールが見え、何人か泳いでいる。つり橋が近くに見えて絶景である(T14)。リフトで渡った先には、レストランなどもあり、そこの前の芝生には、雉(A9)やワラビ−(A10)が放し飼いになっている。その付近を歩き回ったり、渓谷を15分ぐらい遡って歩いたりした後、またチェアリフトに乗って、駐車場に戻る。
11時50分に出て、約160 km離れたビシェノのモテルに妻をピックアップに向かう。2時間20分かかり14時10分に着く。幸い、妻は元気になっていた。今晩は、タスマニア最後になるが初日に泊まったB&Bに泊まるべくソレルに向かう。まず、ビシェノでまだ見ていない潮吹き岩を見に行く。海はきれいであったが、潮の関係か、潮を吹く状態にはならない。南下して、途中、ワイナリーがあったので立ち寄って、スパークリングワインを買う。そこでもらったパンフレットに、スワンシーの先に「歌舞伎」というレストランがあることを知り立ち寄る。往きにも同じ道を通ったが、その看板に気付かなかった(T16)。中に入ってみたら、掛字、酒樽、陶器など、いろいろな日本らしい調度が備えられてあり、日本にあるレストランよりずっと日本調である。ご主人は、日本人で、レストランは18時30分開店で、それまでは、飲み物も出せないといわれるが、見学の許可を得て、写真を何枚か撮る。海岸に面していて、店からの眺めも大変良い。開店までは待てないので、すぐ失礼する。18時30分にソレルのモテルに着く。まだ日の入り(20時37分)まで時間があるので、急いで夕食を済ませて、ホバートのネルソン山(Mt. Nelson;340 m)に行くことにする。上り始めてみると、頂上に行く道が途中で分からなくなって、隣のウエリントン山(Mt. Wellington;1270 m)の登山道路にいつの間にか入っている。頂上に着いたら、日没直後であったが、黄昏のホバートの町など、絶景を見ることができた(T17)。やがて暗くなり、町の灯りや、ソレルに行く湾を跨ぐ海上の道などに灯る灯りなど、美しい夜景を見ることができた。他にも車が数台止まって、若いカプルが夜景を車の中から見ている。外は、気温は5 ℃ぐらいで風もあり、体感温度は、更に低いのであろう。こんなに簡単に来られるなら、もう10 分ぐらい早く真っ直ぐ来たら夕日が見えたのにとちょっと残念に思う。21時に出て、22時にソレルのB&Bに着く。タスマニア島滞在の最後の良い思い出になった。
●写真説明
T1:タスマニア島訪問地
T2:ソレルB&B(Barracks)
T3:ポートアーサー流刑場跡
T4:ホバート、サマランカ広場の土曜市
T5:ワイングラスベイ
T6:ハネムーンベイ
T7:セントクレア湖
T8:ネルソン滝
T9:クインーズタウン
T10:クレイドル山;ダブ湖周遊路
T11:ラベンダー農園
T12:ブルーベリー農園
T13:採ったブルーベリー
T14:マラクーパケーブ
T15:カタラクト渓谷(ロンセストン)
T16:レストラン「歌舞伎」の看板(スワンシー)
T17:ウエリントン山の夕闇(ホバート)



いままで訪問した国の中では、動物園は別として、あちこちで、檻の外にいる始めての動物を見た。
それらの、写真を、見た順序に列挙する。野生以外のものには注(*)をつける。

●動物図鑑
A1 A2 A3 A4 A5
A6 A7 A8 A9 A9

A1*: 食物持込探知犬(種類?):ホバート空港
A2: リトルペンギン:ビシェノでの夜のペンギンツアー
A3: ウォンバット:ダブ湖周遊路で前を歩いていた。
A4: マグパイ(?):ダブ湖周遊路;羽の一部が白いことから判断、単なる烏かもしれない。
A5: すずめ(?):ロンセストンのモテルの部屋に迷い込んでいた。
A6: カンガルー:タスマニアのトロワナ・ワイルドライフパークにて放し飼い
A7*: タスマニアンデビル:上記パークの柵内
A8*: コアラ:上記パークの柵内
A9: 孔雀:カタラクト渓谷
A10: ワラビー:上記;カンガルーとは異なるらしい。