TRAVEL INFORMATION
●ホテルとレストラン
ホテルで16泊(ノルウェー11泊、デンマーク5泊)計11ホテルで宿泊した。予約は、全てインターネットで見て約4ヶ月前に申し込んだ。皆、個性があって、期待はずれのところはなかった。しかし、人様に紹介するならば、一般に多くの方が、割合容易にアクセスできるものが良いだろう。ソグネフィヨルドの要のレルダール(Lardal)のLindstrom Hotelは、日本の複数の旅行社と契約しているらしく、2泊したが、その間、宿泊者の7割以上は日本の団体客で、大繁盛していた。日本人は個人ではめったに来ないそうで、我々が、到着したら、名前を先に先方から言われて驚く。朝食、夕食とも、ビュッフェスタイル(日本で言うヴァイキングは、現地では通じない)で、夕食では、鮭だけでも4種類もあって、日本人の口に合うように工夫されている。ここは、北欧では普通のシャワーではなく、バスタブを備えていて、日本人向きである。日本人は、マナーも良いとマスターも言っていたし、大歓迎されているようであった。(2人、一泊朝食付き、1泊NKr 890, ビュッフェ1人、NKr 290)近くには、鮭博物館があり、ホールの説明は日本語による時間帯もある。
プレーケストレーンは、行きやすいところではないが、フィヨルド地域で一番の観光スポットであろう。普通は、スタヴァンゲルからタウにフェリーで渡り、そこから麓まで25分かけて1日2本ぐらい出るバスで行き、約2時間の徒歩で登ることになる。我々も、タウで泊まったが、Erik Blodoks kurs og konferansesenterという小学会を開けるところが、今年、近くにLilland Hotelというホテルを建てた。2棟あったが、鍵をもらって泊まりに行った新築の建物2棟には、宿泊者はおろか、常駐の管理人さえいなく、極めて静かな所だった。(2人、一泊NKr850)。
ベルゲンでホテルで教えてもらって、魚屋と兼ねた海鮮レストランに行った。観光客ではなく、地元の人らしい人でほぼ満員であった(NygardsgatenにあるHavfruenes Hemmeligheteras)。魚は大変新鮮で美味しかった。レストランのないホテルでは、気兼ねなく、レストランを紹介してもらえる。そういうところは、間違いなく大変よい。

●ドライヴ旅行
自分の慣れた車以外で運転するのが大苦手だったから、外国での車旅行を始めたのは、最初の留学時(1970-72)を除けば、割合最近(1991年)からである。今まで15 ヶ国ぐらいを車で周ったが、ハワイを除いて、全てヨーロッパの、ハンガリーを除いて旧共産圏以外の個人旅行の一応安心な国である。今ドライヴで、苦手なのは、大都会で、特にホテルの場所を探すのが、一番難儀である。ネットで、他の人の旅行記を見ていたら、同じことが書いてあったので、自分だけでないことが分かった。リスボン、セヴィリヤなどでは、1時間以上探し回ったことがある。一方通行などあって、一旦行き過ぎると、戻ってくるだけでも楽でない。特に英語が通じない国だと、聞く相手を探すのにも苦労する。パリやロンドン市内は運転する気にはなれない。ヨーロッパは、マニャルカーが普通だが、最近は10分も走ると慣れるようになった。それでも、急な坂で、後ろにぴったり付けられたときに発進するのは、苦手である。幸い、田舎では、そういうことは、めったに起こらない。右側通行は、左ハンドルになると自然に、右を走れるようになる。それでも、念のために、家内に、交差点などの前で、「右、右」と声をかけてもらい、自分も、頭の中で、常に、再確認するようにしている。家内が、いつもナヴィゲーターをしてくれるが、運転する方は、考えなくてよく、ずっと楽である。ヨーロッパは環状交差点(round-about)が多いが、行き先が分からないと2,3度回って、表示を確認できて便利である。ノルウェーは、1本道が多く、環状交差点は、無かったような気がする。車で旅行するのは、辺鄙なところでも行けて、好きな場所に好きな時間だけ居られるのが一番のメリットと思う。重い荷物を持つ必要もなく、ホテルの移動の度にする荷物のパッキングもすぐできる。ヨーロッパは長雨は無いが、雨中の移動が楽である。ノルウェー、デンマークとも交通量が少なく、運転のマナーも、一般に大変良い。ところどころ、景色のよいところなどに、持参の弁当が広げられるような駐車場とベンチの設備があったりして、運転は大変楽しい。ガソリン代は両国ともL当たり、200円弱と大変高いが、高速料金が大抵は無料なので、かかる費用は、日本と大体同じことになる。ノルウェーの場合は、しばしば、フェリーに乗らねばならないが、日本の高速代と同程度で、長いトンネルも、特殊の観光道路以外では無料である。観光客のフィヨルド巡りは、船でするのが、一般的なようであるが、最初は、面白くても、しばらく見ていると飽きてくる。滝など絶景があっても、遠くからの眺めで、臨場感に乏しい。ネットで見る感想でも、閉塞感があるというものがあった。フィヨルドは、陸から、車で、要所、要所で停めて見る方が、ずっと美しいと自分は思う。北欧は、1970年代の半ば頃から、運転時には、昼でも、必ずヘッドライトの点灯が義務づけられた。対向車への注意としても、効果的と思う。今回、北欧を車で旅行するに当たり、特に心配したことはなかったし、現に、コペンハーゲンの駐車以外苦労は、何も無かった。今後も、元気のあるうちは、運転可能・安全な地域は、できるだけ車で周りたいと思う。

●換金
両国はそれぞれ、ノルウェークローナ(NKr)、デンマーククローナ(DKr)を貨幣単位としている。まったく現金を持たないで入国すると、困ることも多いので、換算率は悪いことを承知で、成田空港の銀行で、それぞれ、約20,000円ずつ交換した。1NKr=19.11円、1 DKr=20.04 円で、コミッションは別には取られなかった。デンマークにフェリーで入国する街に銀行があるかどうか、不安であったので、コペンハーゲンの空港で乗り換えの際に、デンマーククローネにさらに30,000円交換した。30 DKrのコミッションが必要であったが、それを含めても、1 DKr=18.55 円である。オスロの空港で30,000円を交換したら、35NKrのコミッションを含めて、1 NKr=17.52円であった。以後は、‘Citibank’に予め作った口座から、ATMで、2回ずつ現金を下ろした。どこの銀行のATMで下ろせるのか、知識が無かったが、試みた地元の全ての銀行で通用した。平均1NKr=17.47円、1DKr=18.74円であった。ホテルの宿泊費や食事代は主として、カード(MasterCard)で支払ったが、後日、その報告が来たが、日によって違うが、平均1NKr=17.08円、1DKr=18.12円で、随分有利であることを確認した。有利な順に並べると、両国とも:成田の空港 << 現地空港< Citibankカード<クレジットカード の順であった。

●治安
北欧の治安は一般に良いといわれている。しかし、首府のような大都市は、他のヨーロッパの大都市と比べては、良いとしても、東京ほど良いわけではない。今回、コペンハーゲンで、ホテルに駐車場がなく、町の駐車場まで遠いので、18時から、翌朝8時まで、無料というので、ホテルの近くの路上にとめておいた。中央駅から、徒歩7−8分の中心街である。翌朝、出かけるべく、車に行ったら、同じ通りの1台の車の運転席のガラスが粉々に破られていた。車の中に何かめぼしいものが、置いてあったのだろうか。自分の車は幸い無事であったが、ぞっとした。コペンハーゲンのホテルは、ベルをいちいち押さないと入り口のドアが開かないようになっていることも、治安の悪いことを示しているのであろう。特に注意したわけではないが、今回の旅行中、両国で警官の姿を1度も見なかった気がする。他のヨーロッパ諸国と比較すれば、治安が良いということであろうか。

●蚊対策
我々、日本人は、蚊は、寒い地域にはいないだろうと思っているが、北の蚊の脅威は、大変なようである。今回、チューブ式(スプレー式は、成田で没収される)のものを購入して、持参したが、不思議に 蚊の襲撃にはあわず、南のチボリ公園で野外ショーを見ているときに初めて役立った。

●習慣の違い
ヨーロッパと日本の習慣の違いは、気付いているもの、気付いてないものを含めて多々あると思うが、旅行に関連した理由のよく分からない大きな違い記す。ホテルで、週末(金、土)に泊まると、料金が割引されるところが、ヨーロッパにはかなりある。日本なら、逆であろう。ホテルは2人泊まりを原則として、1人でも料金は大抵同じである。道を聞き(大体 Would you show me the way to..と言っているが)、紙と鉛筆を差し出すと、5割近くの人が、文章で書き始める。あわてて、地図を描いてくれとお願いして、初めて描いてくれる。北欧でもそうであった。

●ノルウェーとデンマークの比較
人口:N. 459万人、D. 540万人, 面積:N. 32.4 万km2, D. 4.3 万km2(比較;日本、12700万人、37.8万km2)。共通点も多いが、日本からは、なかなか分からない違いも大きい。両国ともNATOには加入しているが、EUにはデンマークは加入しているが、ノルウェーは入っていない。ノルウェーの最高峰はガルドホッピゲン(Galdhoppiggen)といい標高2469 mで、国全体が、日本のように山国であり、高緯度にあるので、積雪も多く、水力発電に困らず、電力は日本の十分の1程度と安く、スウェーデンに輸出までしている。おまけに、北海油田から、石油も産する。一方、デンマークの最高峰地点は、上にも述べたように、173 mである。西風が強く、それを利用した風力発電が盛んで、その装置は諸外国に輸出しているし、風力発電の割合を、現在の10%から、20%にまでしようとしている。従って、観光的には、ノルウェーの風景は、自然そのもので、広大で、何ともいえない美しさである一方、デンマークは、平面的であるが、写真の図になる場所も多い。ノルウェーには、全長24.5 kmのレルダールトンネルを初め無数の長いトンネルがあるが、デンマークには、短い水底トンネルが2つしかない(2つとも通った)。ノルウェーには、フィヨルドを渡すフェリーが多いが、デンマークは、長い橋が2つある。1つは、コペンハーゲンのあるシェラン島とフェン島を結ぶ橋(Storebalt橋:途中に島を介して、約17.3 km)で、もう1つはスウェーデンのマルメとの間の橋(Oresund橋:1624 mで、つり橋として世界第2)である。
両言語は、スウェーデン語とも似ているが、発音は、デンマーク語は、文字と大分異なり、スウェーデン人が「舌の病気」とからかうほど、日本人には特に難しい。土地の名前さえ、正確に発音しにくい。ノルウェー語はスウェーデン語と似ていて、お互いが自分の言葉で話せば、容易に分かり合えるといえる。ノルウェーは、魚介類も盛んに販売しているが、デンマークは酪農で知られるだけあって、牛肉などを食していて、魚介類は、鮭などを除いてあまり食べないようである。
デンマークは、費用は別として、子供連れで観光に行くのに非常に適した国である。アンデルセンの生誕国であり、世界的にも知られた遊園地が3つ(バッケン、チボリ、レゴランド)ある。砂丘もある。海岸も、砂浜で子供の遊泳に適したところが多い。ホテルでも子供用室内プールがあった。それに比べて、観光の見地からは、ノルウェーは子供にとっては、大変つまらない国かもしれない。
     記憶に間違いがなければ、35年前は、1SKr?72円、1NKr?1DKr?49円であったが、現在は1SKr?14.5円、1NKr?17円、1DKr?18円で、スウェーデンのノルウェーやデンマークに対する経済の優位は、完全に逆転してしまった。いずれにせよ、これら3国は、世界的に見ても、高収入、高税金、高物価、高福祉、弱者特別配慮、高離婚率、環境保護、男女完全平等、国民総背番号制、出生率低下、短労働時間、長期休暇、平和愛好・世界貢献、嫌暴力、外国(特に南)旅行好き、英語教育の徹底……の国であり、日本の社会制度、習慣などは、良否は別として、意識しているわけではないが、これらの国に20−30年遅れて、追従してきているように感じる。従って、これらの国の動向を見ていると、日本の将来が、予測できる気がする。しかし、長寿や、安全など、かっては、これらの国が誇っていたことで、日本が、追い抜いた事項もあるのは、喜ばしい。

●大戦の爪跡
旅行書で、最北の町、ホニングスヴォーグや、フィヨルド観光の要所のヴォス(Voss)までもドイツ軍に爆撃、破壊されたことを知り、現地に行って、まさかこんなところまでと、ドイツ軍の勢い、戦争の怖さに改めて驚いた。「テレマークの要塞」で知られる、ドイツ軍のリューカンにある重水工場からの重水略奪の攻防は、今の若い人は知らないであろうが、第2次大戦の行く先を左右する重大事の1つであった。リューカンは、今回訪問したフィヨルド地域からは、少しオスロ寄りのところにある。フィヨルドの山中で、ドイツ軍と戦った跡などの石碑が建っていたりして、びっくりした。デンマークでは、フレデリクスハウンのバンゴー(Bansbo)博物館で、戦争時の苦労を述べた展示もあったし、西海岸に、ドイツ軍が、連合国軍の上陸に備えて作ったと思われるコンクリートのトーチカが残っていた。フランスのドーヴィルで以前に同様のものを見たが、こんなところにも残っている。旅行前に読んだ北欧の歴史は、あまりにも多い戦争で、複雑すぎて頭に入らなかったが、スウェーデンも含めて多くの戦火を味わっている。今の北欧の平和な状態から見ると嘘のように見える。なお、スウェーデンは、第2次大戦中は中立を守ったが、ドイツ軍のノルウェー侵攻に際して、道を自由に通過させた。このことは、スウェーデン、ノルウェー国民の心のしこりとして残っているようである。スウェーデンは1814年以来、190年も中立を守って、NATOにも参加していないが、このことは、どうしようもなかった汚点として傷ついている。
●結語
北欧は、コペンハーゲンなどの首府を除いて、余計な心配なく旅を楽しめるところである。その理由を考えると、以下のようである。(1)安全である。つり銭などをごまかされることもない。チップも必要ない。最初、部屋掃除に枕銭を置いたら、机の上に戻っていた。レストランでは、サービス料が含まれている。(2)観光客を含めても、人口密度が、圧倒的に少ない。観光スポットでも観光客ゼロのことも多い。(3)英語は、ほとんど誰でも話せる(フィンランドはあまり経験がないので、分からない)。書いてある文字も、昔、スウェーデン語を習ったので、大体想像がつく。(4)夏に限ったことであるが、日没に心配せず旅行できるし、景色はどこも大変良い。(5)ヨーロッパ大陸の諸国と比べて、公衆トイレも多い。難点は、(1)旅行に向いているのは、オーロラ観光を除けば、夏期(6,7、8月)に限られる。(2)物価が、大変高い。大体、日本の1.5倍ぐらいである。(3)フィンランド(Euro採用)を除くノルウェー、デンマーク、スウェーデンの通貨の単位の名称は、クローネだが、それぞれ異なる。(4)夜9時以後にレストランで食事をするのは、首府以外では難しい。食べ物は、好みにもよるが、一般的に言えば、そう美味しいものはない。(5)ギリシャ・ローマの文化は、ほとんど及んでなく、南欧諸国のような、人間創造の驚くような文化遺産には乏しい。
北欧に、観光旅行、特に個人旅行をされる方は、スカンジナヴィア政府観光局を訪れ、必要なパンフレットを手に入れてくることをお勧めする。最近は、そのホームページにも、「地球の歩き方」などにも所在地を明らかにしていないので、実際、来ている人がほとんどいないが、開いていないわけではない。〒102−0076東京都千代田区五番町12−11泉館五番町4階。エレヴェーターを降りた6帖程度の無人の空間に、パンフレット類が展示されているので、人を煩わせなくて勝手にもらえる。今回の旅行で、特に、フィヨルド地域の地図などで、大変役立たせていただいた。