エアーズロック(Ayers Rock) 世界遺産
●計画 
世界最大級の一枚岩でできていて、最近は、テレビや観光旅行の宣伝などでもよく見る光景で、興味はあったが、実際行く計画を立てるまでは、何も知らなかったことを認識した。名前からしても、Air’s Rockと書き、天にそびえるという意味だろうというぐらいにしか思っていなかった。実際、調べていくうちに、これは、いろいろな意味で、意外に登るのに大変な所だということが分かり、実際行ってみて、更に、予想していたより難しい場所であることが分かった。まず、観光書を見ると、アボリジニにとって、一部の司祭以外は、登ることのない岩で、観光客が登ることを快く思っていない人が多いと書いてある。そして、ホテルの予約をしようと思ったら、この地域は1社の独占で、宿泊料が同種のホテルに比べて2倍ぐらいする。前年行ったニュージーランドのマウント・クックの地域も同様に1社の独占で、宿泊代が、他の2倍以上したことを思い出させる。マウント・クックでは、それを嫌って、50 kmぐらい離れたところのそれより良いモテルに1/3ぐらいの価格で泊まれた。エアーズロックは、砂漠に孤立した地域で、一番近い宿泊地はアリススプリングス(Allice Springs)で500 kmも離れていて、そこから、来るのには無理がある。エアーズロックは、高度差350 mと低いのにも拘わらず、年間の登山許可率は約50%であることを知り、1泊で、もし許可が出なければ、くやしい思いをするといけないので2泊することにするが、結果的には、このお陰で、登れることになった。
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オルガ岩群(The Olgas)とサンセットビュー
2月4日、シドニー空港を朝9時40分に出て、11時40分にエアーズロックに着く。エアーズロックはシドニーより基準時間が30分遅れているから、2時間30分かかっていることになる。カンタス航空は、国内線でも食事が出ると聞いていたが、軽食が出た。
飛行機のタラップを降りる時から、熱気を感じる。多分40 ℃に近かったと思う。小さな空港で、建物に入ったすぐの所にAVISのカウンターがある。横に大きな看板があり、普通の契約では、事故の場合、最大$2750まで払わねばいけないが、1日当たり$25.30払えば、$385までで済むと書いてあるので、これは大変とそれを申し込む。これほど、大きく書いてあるのは見たことがなく、いつも中身は確認せず、全ての保険をつけるようにしている。手続きを済ませて建物の外に出るとすぐ前に、駐車場があり、一般の車も、レンタカーも同じ場所に停まっている。駐車場で唯一の黄色い車なので、すぐ分かる。空港から7 kmぐらいのところに、エアーズロック・リゾートという1.5 km四方ぐらいの領域があり、この中に全ての宿泊施設がある。ホテルは6軒とキャンプ地がある。その中のロストキャメル(Lost Camel)というホテルに12時少し過ぎであったがチェックインできる。すでに11月の末に申し込んだら、すぐ料金を引き落とされて予約できた。2人1泊で朝食なしで、23 182円であった。円安の今では、更に高いであろう。テレビも無く少し狭いのは良いとしても、独占ゆえにちょっと高い。他の場所なら、丁度この半分の値段であろう。1時間ほど、休憩して、オルガ岩群を見に行く。途中、ウルルーカタジュタ国立公園の入場料を支払う。1人$25で3日間通用なのは有難い。エアーズロックはすでに空港から遠くに見えていたが、左前方に大きく見えてくる。しかし、まず、オルガ岩群を見に行くので、右に曲がる道に入る。ホテルから、直線に道をつければ、その2/3の距離ぐらいにはなるが、岩群を半周して反対側から近づくように道ができているので、50 km強ある。岩群の近くにサンセットを眺める場所がある。また天井のついた机のついたベンチがあり、1組のカプルが持参のバーベキューのセットで、食べ物を料理しながら食べている(Y1)。温度は40 ℃程度あり、日向は、ギラギラと太陽が照り付けていて、しかも、多くの蝿がうるさく付きまとってくる。妻は、東急ハンズで購入した中国製の防虫ネットを被る。屋根の下とはいえ、こういう情況でバーベキューをしているのに感心する。この暑さで、このカプルと我々しか来ている人はいない。岩に近づいて、ちょっと歩いてみたが、太陽はギラギラと照りつけ、翌日のエアーズロック登山に備えて体力を消耗しないためにも、また、蝿の襲来に悩まされないためにも、早々に引き上げることにする。以前は、「五月蝿い」と書いて「うるさい」と読んでいたが、5月ではないが、この字の表現がぴったりの情況である。1組の団体が来て、案内人に連れられて、暑い中を、岩の間の散策コースに行った(Y2)。残る人も多くいて、歩いていった人達は若い人ばかりだった。その辺の案内図の写真を撮っていたら、この団体の残った老婦人(オーストラリア人かアメリカ人)が、知らずに、入り込んできたので、私がどいたら、先方が気づいて謝るので、こちらは、明日も泊まるから、ちっとも急いでないと言ったら、「こんなところに2日も泊まって何するの」と呆れられた。確かに、明朝エアーズロックに登れれば、もうその後、することも無く、高い宿泊代を払っての2泊目は無駄になるのだが、その時は、思ってもみなかったことだが、この2泊目が無駄にならないことになる。元来た道を25km程度戻ったところに、遠くからこの岩群を見渡せる見晴台があるので立ち寄ってみる(Y3)。誰もいなかったが、鳥が一匹いた(A11)。その辺にいる動物を看板に絵入りで表示してあったが、中にサソリもあったので、柵を越えて草むらに入るのは危険であることを知る。以前行った、米国のモニュメントバレーで、そのような注意を受けたことを思い出す。砂漠の草むらには、毒蛇など恐ろしい動物も隠れているらしい。20分ぐらい経って立ち去ろうとしたら、日本人の団体バスが1台着いて、見晴台に昇ってきた。言葉から関西の人と分かる。
ホテルの近くまで戻って、アボリジニの生活や文化を展示紹介しているカルチュラルセンターを見る。カメラの持ち込みも禁じているほど、アボリジニに気を使っている。しかし、オーストラリア旅行中、アボリジニ人を見たのは、シドニーのブルーマウンテンとオペラハウスの前で、観光客相手に見世物をしていた人だけである。この、エアーズロックは、彼らの聖域ということで、いろいろ規制しているが、彼らを見かけもしない。彼らを制圧してしまった罪滅ぼしに、白人が、いかにも彼らを大事にしているかというポーズのように見える。丁度、同様なことをアイヌ民族に対して行った倭人の末裔としては、何とも複雑な気持ちである。
一旦ホテルまで戻って、近くのスーパーで防虫ネットを$7.5で購入する。家内が東急ハンズで以前に買っていたのと全く同じ中国のメーカー製で、ハンズでは、半分ぐらいの値段で購入したという。日の入りが19時30分というので、日の入り時のエアーズロックを見に、18時にホテルを出る。先ほど、オルガ岩群の帰りに、エアーズロックを一周し、日の入り観察地点も下見していたので、すぐに行ける。団体バスと一般車の観察地点は、全く別になっている。多分、団体用は、そこで、バーベキューの夕食が提供できるような施設が備わっているのではないかと想像する。一般車用の観察用駐車場にはすでにいくらか先客が来ていた。駐車できる場所は十分あるのだが、そこからエアーズロックを眺めると、前に立ち木があって全体を眺望できる場所は半分以下と限られている。ちょっと、木を切ってくれれば、もっとすっきり見えるのに、自然保護を称してか、単に気が効かないためか分からないが邪魔になる。この時間、日中よりかなり温度は低くなって、30 ℃代の前半と思うが、蝿は相変わらず多く、車に入る際、懸命に蝿を追い払ってすばやく入っても、1,2匹は、一緒に入ってくる程度に多い。次々と車が入ってくる。車止めの木の上に座って、車の全面を背もたれにして、岩を見ることにする。持参のテーブルを広げて、飲食しながら、見ている人もいる(Y4)。時間の経過とともに何枚も写真を撮ったが、デジタルカメラで、まだ複雑な使い方に熟知していないので、暗くなるにつれ、露出時間が長くなり、結果として、明るさの変化があまり出ないものとなってしまった(Y5)。ポスター写真などで見る、真っ赤に燃えた写真は、適度に雲がある場合で、年に数日しか撮れない姿であるとどこかで読んだことがある。このエアーズロックに来る人の99%は観光で来ていて、しかも、山に登れる人は限られているので、この夕日に染まる岩見物が、当地訪問者全てにとってのハイライトであるに違いない。日の入り後20分後ぐらいまで見て、暗くなった20時過ぎに、そのまま車で、パイオニアホテルのセルフバーベキューに入る。エアーズロックリゾートのレストランの価格が高い中で、ここのバーベキューが一番割安と酒井さんから聞いていた。何か、看板にあるメニューから$20程度の中から1品を選び(Y6)、あとは、サラダバーから自由に食べ物を取って、横にある熱くなっている鉄板上で、焼いて食べるという方式である。我々はえびを選ぶ。バラムンダ(Barramundi)というのは分からなかったが、後で調べたらオーストラリアに特有な肺魚だそうである。サンセットの後なので、結構繁盛していて、注文をするのに行列するほどである。飲み物は、隣にあるカウンターで別途購入する方式になっている。自分は車なので、炭酸水を購入したが、アルコールを購入する人は、店員とよくもめている。しばらくして分かったが、アルコールを購入する時は、どのホテルの何号室に泊まっているか申告しなければいけない。店の上の方に、アルコールの販売ライセンス番号が書いてあり、そこに販売条件が小さな字で書いてあるが、ほとんどの客は、それを見ないから、何が何だか分からずにもめている。要するに、この国は、イスラムの国や、スウェーデンなどのように準禁酒国なのだ。オーストラリアワインなど有名だし、大抵のレストランでは、国産のビールを出すので、それが分からない。販売条件をもっと客の分かるところに大きく書いて示せばよいのにと、この国も、気の利かない人が多いことを知る。ヨーロッパなど外国旅行をするたびに日本人は、本当に良く気が付くよう教育されている国民だと思う。アメリカ人のような英語の達者な人ももめているから、言葉の問題ではないようで、日本人もビールが注文できなくてうろうろしている。教えてあげてプライドを傷つけても悪いと思い何もしなかった。
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登山空振り
翌日は、エアーズロックに登るべく、朝5時15分にホテルを出て、前日、確認していた登山口に急ぐ。公園の入り口の係員には前日購入した入園券を見せる。この時間でも、働いているから、24時間開いているのかもしれない。登山口について、登ろうと車を降りたら、山の係りの人が、そこに常時おいてあるアルミ製の担架入れのような長い箱から、何か標識を出しているところで、それを柵に掛けたのを見て大変驚いた。「頂上強風のため登山禁止(CLIMB CLOSED DUE TO STRONG WINDS AT SUMMIT)」と書いてある。そこでは、ほとんど風が吹いていないのに、わずか350 mの高さで、頂上が登山できないほど強風が吹いているとも思えない。この山は登山のできる確率が年間50%なので、2泊することを勧めるとあちこちに書いてあったことが本当であったことを認識する。そして、明日も、もう1度チャンスがあり、2泊の予約して良かったと思った。でも、明日は登れるのだろうか。これらのことは、ほとんど一瞬に頭を巡った。そういえば、他に1組ぐらいしか来ていない。ホテルで確認してくるべきだったが、まさか、この状態で、強風が理由で登山禁止になるとは思わなかった。アボリジニが、観光客がこの山に登るのを快く思っていないことを配慮して、なるべく登らないように、いろいろ理由をつけて制限し、関係者としては、なるべくサンセットだけ見て帰ってもらうのを願っているのかもしれない。
仕方がないので、昨夕サンセットを見たのと逆方向の場所にサンライズを見に行く。5時50分に着く。サンライズの地点は、団体バスと普通の車とは同じ場所であった。団体がバーベキューの必要がないからであろう。サンライズはサンセットに比べてあまり美しくもなく感動的ではないのは、人間の心理に基づくことなのだろう。8時半にはホテルに帰って寝なおしたり、観光パンフレット類を読んだり、絵はがきを書いたり、夕方まで、部屋で休養する。隣にあるスーパーで、サンドイッチなどを購入して、昼食にする。18時少し前に、ホテルを出て、1 kmぐらいのパイオニアホテルに、夕食を取るために歩いて出かけたが、蝿の襲来と暑さで、また戻って、車で出かける。このホテルの裏手に、小高い展望台があるので、遠くから、岩山のサンセットを眺めに行く。セミプロかマニアのカメラを持った人が2組すでに待機している。オルガ岩群とエアーズロックの両方が遠方に見えるが、丁度太陽がオルガ岩群の後ろに沈むので、それを中心に写真を撮る(Y7)。その後、昨日と同じところでバーベキューをしてホテルに20時前に帰る。今日は、まだサンセットを見に行っている人達が帰ってくる前だったので、空いていた。
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登山達成
今日2月6日は、昼間に当地を去るので登山ができる最後のチャンスである。朝バナナだけ食べて、6時前にホテルを出る。ホテルのフロントで登山許可の可否を調べてもらったら8時以前は可とのことでほっとする。6時15分に、登山口に着いて、少ない立ち木の横に停める。ちょうど、登山口が開かれたところで、私は2番目に登り始める。妻は、リュウマチで鎖に掴ることができないので、前から登山はしないことにしていて下で見ている。岩山の外形から分かるように、最初が一番勾配が急で、一旦上に上がってしまえば、上は平坦に近い。最初の急な部分はずっと鎖に掴まりながら登る。上に最初に登っている人が見える(Y8)。用意してきた手袋は大変役立つ。この写真で見える一番上当たりで、急な勾配が終わり鎖もなくなる。ここまで、20分強かかった。鎖が終わって、緩やかな登りになった頃、振り返って遠景の写真を撮る。遠方の山は、朝日を浴びたオルガ岩群で、黒い陰は、エアーズロック自体の影である(Y9)。つまり、太陽の昇る方向に登っていることになる。歩くべき道には白いペンキが塗ってあるので、道を間違えることはない(Y10)。ヨーロッパの山は、自然保護の精神から、道標はまったく無いか、最小限にしてあるが、ここは、その方式とは反し、ある意味では親切である。そのうちに若者の団体が登ってきたので、聞いたらデンマーク人とのことであった。デンマークには山らしい山は無いから、登山の気持ちは、我々とは違ったものがあろう。若いせいか、太陽の好きな(heliophilous)国民だからか、ごく軽装や、裸で登っている者もいて、滑って転んだらどうなるのかと考えの足りなさを心配する。頂上に着いたら、彼らが独占していた。カメラを岩の上に置いてセルフタイマーで自分の記念撮影をする(Y11)。頭に巻きついているのは防虫ネットである。登るにつれて蝿もいなくなったので、上に上げてしまった。中央の台に乗っている人が見えるが、これが、茶色のペンキで表面を塗ったコンクリートか石の頂上の標識である。頂上からは360度眺めることができるが、遠方2ケ所に山が見られるが、それ以外は、どの方向を見ても、同じ風景で、朝靄のためか、水平線がはっきり見えるわけではない。やがて日本人の団体が登ってくる。流石に日本人には裸で登る人はいなかった。十分、頂上で周りの景色を楽しみ、降り始める。鎖の部分は降りる方が登るより大変で30分かかった。水は、小びんに1本持って行ったが、汗もかかなかったので、不要であったが、重量減少のために、できるだけ飲む。 
下山の際、駐車場に26台の車が見え、そのうち大型バスは3台のように見える(Y12)。頂上に登ったのは、50名程度だから、ここに来た約半分ぐらいが頂上までは登ったのだろう。途中で、怖くなって降りた人もいるようである。8時30分より前に戻る。ゆっくりしていたので、速ければ1時間半のコースを2時間20分ぐらいかけたことになる。すでに8時に登山口は閉鎖されていたので、鎖の部分で登る人と行き違う心配はなかった。この時期、夕方の温度も高いので、夕方の登山はない。いずれにせよ、登られて旅行の目標の1つが達成され、ほっとした。どうしても登りたくて、登られない場合の1つの手段はヘリコプターで見ることであろう。タスマニアでは、時々、部屋、車ともときどき暖房を入れていたが、当地では、終始冷房を入れていた。
 ホテルをチェックアウトタイムの直前の10時前に出て、リゾート内のスタンドでガソリンを満タンにして、空港に着いたら、まだ10時半であった。まだ誰も来ていないロビーで、行き先の観光書など読みながら待って、13時50分発のカンタス航空で、パースに向かう。
●写真説明
Y1:オルガ岩群の前の休憩ベンチ
Y2:オルガ岩群と散策ツアーする一団
Y3:展望台から見たオルガ岩群
Y4:エアーズロックのサンセット
Y5:サンセット見物風景
Y6:セルフバーベキューのメニュー:パイオニアホテル
Y7:オルガ岩群のサンセット:パイオニアホテルよりの遠望
Y8:エアーズロックの登山道
Y9:エアーズロックから見たオルガ岩群の朝
Y10:エアーズロックの頂上近くの登山道;朝日の逆光
Y11:エアーズロック頂上登山記念
Y12:下山時に見た登山口
Y13:朝8時から出た登山禁止の標識

●動物図鑑
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A11: レンジャクバト(?):オルガ岩群展望台
A12*: ひと瘤らくだ:エアーズロックリゾート;観光用
A13: マイナ(?):上記;くちばしと目の周りが黄色なのが特徴というので、名前を推測