TUNISIA C
Ka1
Ka2
Ka3
●ケルアン(Kairouan)とスース(Sousse)(世界遺産の両都市)
 学会参加の家族用の遠足として、5日目(9月21日(水))にケルアンとスース行きが企画されていて、
当日午前は、自分の専門とする分野ではないので、そのバス遠足に朝から参加する。参加料は昼食込み
で50Dであった。チュニスの南に約160 km、学会会場から、約100 kmで、2つの町は、別々に世界遺産に
登録されている。まず、ケルアンに向う。ケルアンの語源はキャラバンだそうである。Kairouanを、カイロワン
と読んでいる観光書が手元にあるが、フランス語読みでは、ケルアンが近い。地球の歩き方では、「ケロアン
(またはカイルアン)」と読んでいるが、ちょっと違うのではないかと思う。カイルアンは英語読みなのだろう。
この町は、9世紀のアグラブ朝以来首府となっていたが、1057年のベドウィンの侵入で破壊され、その後、
首府はチュニスに移ってしまった。
途中までは、列車の線路に沿って道があるので、列車が見えた(Ka1)。旧市街に入る前に、アグラブ朝の
貯水池を見る(Ka2)。9世紀、アグラブ朝時代に造られた中世世界では最高技術のものであった。現在の
ものは、1969年に修復されたものであるが、今でも市民の重要な水源だそうである。
 次に、旧市街に入り、買い物のための自由時間が与えられるので、またアロマテラピーオイルを購入する
(Ka3)。香りを試して、注文したものを小びんに分けてくれて、レッテルは、白紙を張り、ペンで名前を書いて
くれるという原始的な方法であるが、他で買う半分ぐらいの値段である。ただし、帰国してみたら、フタの良く
閉まってないびんから出たオイルで字が一部消えて名称の分からなくなったものもあった。
 当地の目玉の、北アフリカで最古のグランド・モスクに案内される(Ka4)。671年にオクバ・イブン・ナーフィー
によって建てられ、その後何度も改修され、現在のものは9世紀に建立され、その後も改修されている。
イスラム世界では、メッカ、メディナ、エルサレムに次いで4番目の聖都であり、当地への7回の巡礼は、
メッカへの1度の巡礼に相当するそうである。中心にある穴は、そこに向ってゆるやかな傾斜があり、
貯水槽に集められるようになっている(Ka5)。
Ka4
Ka5
Ka6
 次に、カーペット製作の見学をする(Ka6)。カーペット作りは、全部女性の仕事のようで、この付近の
重要な外貨獲得の産業であろう。1枚を作るのに1人で数ケ月もかかるそうである。人件費が安いから
成り立つ商売であろう。それに、外にあまり出ない習慣のイスラム圏の女性には大変向いた仕事である。
機械織と比べて違いは、素人の自分には分からない。晴海の国際見本市であったかもしれない。ついで、
その工場でカーペットの展示販売を見る。われわれ10人ぐらいの一行は、現地の茶を飲みながら、3人の
店員が次から次へと品物を出して来るのを見る(Ka7)。前日見たものより、規模は大きいが、ほぼ同じで
ある。上は数十万円のものから見せる。中に1人、2人、興味を示す人には、店員が個々に値段の交渉を
する。自分は、前日、1枚購入していたが、小さいものをもう1枚プレゼント用に買ってもよいかと思い、
200まで負けるというので、200 D(約1.8万円)かと思ってクレジットカードで払おうとしたら、200 Euro
(約3万円)というので止めた。店を出るとき、190 Euroにすると言ってきたが、一旦買う気がしなくなったの
で、買わなかった。結局、誰も買わなかったが、見物料を多分払っているのだろうから、店も損をしては
いないのだろう。実際、カーペットは、最初相手のいう値段の何割ぐらいで買えばよいのかよく分からないし、
負けさせる交渉はあまり好きではない。そこの壁に値段表は一応貼ってある(Ka8)。前日購入した品物の
参考になる。書いてあることは分かるが、これが、信用できる値かどうか、品物は、表のどれに相当するか、
とっさには、分からない。
                                         
羊毛製カーペットの価格表;手織り
織り方選択1平方メートル当たりの値段
12×121つ目220.250 D
20×201つ目        280.320 D
20×202つ目        220.280 D
30×301つ目        410.510 D
30×302つ目        240.340 D
40×401つ目        540.615 D
40×402つ目        320.390 D
50×50絹1700.2400 D
マルグム(Margoum)織;手織り
選択1平方メートル当たりの値段
1つ目130.180 D
2つ目90.110 D
                        [註]
● 織り方(texture)というのは、1平方センチメートル当たりのノット数をいうらしい。
● 選択(choix)というのは、カーペットは、何故か2枚つながって製作されている場合があって、
  そのうち、2枚目も購入すると、2枚目は大分割安になるらしい。
● Margoumは、地元ケルアンの、ベルベル人の独特の幾何模様をしたカーペットの名前らしい。
● 貨幣単位のDはディナール(1 D =90.293円[2006年9月15日の交換率])
● 絹のカーペットの利点は、よく分からないが高価である。
Ka7
Ka8
昨日購入したカーペットをこの値段表で計算すると、410.510 D/m2×0.98 m×0.52 m =209 Dとなるから、
書いてあった正貨204 Dとはほぼ一致する。正貨はほぼ、統一されているらしい。2枚目の値段で計算すれ
ば、240.340 D/m2×0.98 m×0.52 m=123 Dとなるから、購入した価格の150 Dは少し、高かい。
カーペット見学の後、昼食を取るレストランに移動中に、女性が荷物を運んでいる光景を目にする(Ka9)。
本で見ると、この国では憲法では男女同権なのだそうだ。 
昼食後に、スースに移動する。町の中心部は、南北700m× 東西450m程度のほぼ長方形の城壁に
囲まれた部分からなっている。門は6つある。この町はフェニキア人によって建設され、ローマ人も港を利用
したが、アラブ人の侵攻で9世紀中ごろに形成されて、旧市街は今日までよく残されている。人口は約15万人
で、チュニジア第3の都市で、観光客数はチュニジアで一番多い。旧市街(メディナ)の入り口付近で止まり、
自由見学が許される。グランド・モスクの隣にある7世紀に建てられたメディナ最古の建造物であるリバトを
見る(So1)。
町を外敵から保護する要塞となっていた。地上約38 mの最上部から隣のグランド・モスクや港がよく見える
(So2)。リバトは後にイスラム教修道院として使用された。
見学後の自由時間は、リバトから見えた港を見に行く。港の横で「ヘンナ・タトゥ」という変な看板を見つける
(So3)。帰ってwebで調べたら、ヘナと読むことが分かる。植物の名前で、その汁を用いて着色し、1週間
ぐらいで脱色するらしい。日本発の名前ではないが、日本でキットが販売されている。自分が無知であった
ことを認識する。何故か、数十年前より刺青は日本よりヨーロッパの方がずっと人気がある。そのすぐ横には、
海水浴場があり、ヨーロッパからと思われるツーリストが多数来ている(So4)。ドイツ人やフランス人が多い
らしい。ホテル代などは、ヨーロッパの値段の1/3以下であるから、地中海海岸沿いの観光地にはヨーロッパ
から観光客が大挙して来ているのであろう。
湘南海岸で秋の彼岸の頃に泳いでいる人もいないと思うが、ここでは、まだ日中は暑すぎるくらいである。
地元にとっても、観光業は、主たる産業であろう。イスラム教の世界でトップレスを許しているのも不思議な
話であるが、アルコールも自由である。町には、2006年7月22日―24日にMariah Careyの公演があるという
大きな写真入ポスターが、まだ貼ったままであった。一般庶民が行けるとも思えないので、観光客が主に
行くのであろう。普通は「郷に入っては郷に従え」で、特にイスラム圏ではその傾向が強いが、この国は
観光客に最大限合わせているようだ。ビールも生産しているし、ワインは昔から名産品である。カルタゴの
マゴ(Mago)の書いた28冊からなる世界最初の農業書(原書はなく、ラテン語訳が残った、正確な年代も
分からないらしい)で、ローマにワインの造り方が伝わったといわれている。何故か、日本の本には、マゴン
と書いてあるものが多いが、マゴンはワインの銘柄と思う。この後、18時30分にスースを出て、ハマメット
に帰る。帰りのバスは1時間近く、ほとんど気持ちよく寝ていた。
So1
So2
So3
So4
写真説明

Ka1:バスから見た列車
Ka2:貯水池
Ka3:アロマテラピー油
Ka4:グランド・モスク
Ka5:グランド・モスクの貯水槽受け口
Ka6:カーペット製作見学
Ka7:カーペット展示販売
Ka8:カーペット値段表
Ka9:何かを運搬する女性
 
スース
So1:リバト(見張り台)
So2:リバトからの眺め
So3:Henna Tattoo
So4:海水浴場